勇者に敗れた魔王さま、今は美少女でギルドの受付嬢やってます
yamadatarou
第1話 魔王さま、勝利の美酒に酔いしれる
「ふふふふ、勝利の美酒とはとかく美味なるものか。」
魔王の言葉が、玉座の間に響いた。
黒曜石と赤い魔石がはめ込まれた不気味なレリーフが施された椅子に座りながら、盃の酒を揺らし、魔王はどうしても止まらぬ笑みを浮かべながらおもわずつぶやいた。
「もはや勝利はわが手に……だな。」
『北の帝国、西の王国、そして東の連合諸国――この一手ですべてを制圧できる。』
「わが軍団は魔王史上かつてないものになっておる。」
抑えられぬ興奮が思わず魔王の独り言を大きくする。響いた声が玉座を照らす魔法の灯をゆらゆらと揺らし、床に敷かれた深紅の絨毯に映る魔王の影もまた、ゆらゆらと揺れた。
『なぜなら、本来勇者が手に入れるべき神なる神器を、すべてをこの魔王軍が手中にあるからだ。』
盃の酒を飲み干し、新たに酒を注ぐ、そこに映る魔王の顔は少し歪んでいた。
『まったく女神とやらめ 無駄に試練なんぞもうけおってからに あつめるのが一苦労であったわ』
神器を集めるための試練を思い出すと 魔王の鼻から鼻水がしたたり落ちる。
「しかし苦労のかいがあったというものよ おかげでその力をもって人間どもを蹂躙できるのだから」
北の部下には《世界樹の剣》を。
西の部下には《竜炎の杖》を。
そして東の部下には《永遠の鎧》を持たせた。
これにより、魔王軍はかつてない強さを手にし、もはや敵なしの軍勢となった。
しかし、唯一の問題はあった。
「……ふむ、無類の強さを誇るこの神器、いや今は魔神器と呼ぶべきか?」
魔神器は持ち主である魔王の魔力を源とする。
つまり、魔神器を部下に貸し与えた今、魔王自身の魔力は激減しているのだった。
「正直、今の吾輩……わりと雑魚雑魚である。」
玉座の間にすきま風がながれる。
「だが、問題はなぁい!いまはまさに絶賛戦争中!! 余の軍勢は圧倒的であり、敵軍は崩壊寸前!!」
魔王は高笑いをしながら盃を天にかざした
「まさに水も漏らさぬ作戦とはこのことよ!!!」
使い魔から続々と届く勝利の報告が届き、魔王の興奮は絶頂であったまさにそのとき
――城の扉が、静かに開いた。
――勝利の報告が矢継ぎ早に魔王の元に届いた。
使い魔たちが誇らしげに報告し、そのたびに魔王の表情はほころんだ。
「世界はわが手の中よ!!」
しかし、ほこらしげな使い魔の中に一匹だけおかしな動きの使い魔がいた。
ヨタヨタとした足取りで魔王の前に進み出たその使い魔は、顔面蒼白、全身を震わせながら絞り出すような声で魔王に報告した。
「大変です!!魔王さま!! 勇者が!! 勇者がこの城に単身攻めてきましたああああ!!!」
「そうか勇者が攻めてきたのか、ガハハハハって勇者あああああ???」
あまりの事実に魔王は狼狽して椅子から転げ落ち髪を振り乱しながら
「どぉぉぉうしてぇぇぇええ? どうして勇者がここにくるのおおおおおお???」
と変顔しながらおもわず叫び散らした。どうしてといわれても攻めてきたからとしか言いようがない。とにかくこの緊急事態を魔王は乗り越えなければならない
「落ち着け!落ち着くのだ!!我は魔王!!そう、深淵の覇王ベルゼクスなるぞ!!」
魔王は狼狽しながらも自らを落ち着かせて、この事態を乗り切る作戦を考えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます