徹夜の過ち

山田ジギタリス

徹夜の過ち

 徹夜で公募に出す小説を書いている。


 あと10,000文字書けば終わる。

 

 テーマは異世界での冒険物。とりあえず5000文字まで進んだ。

 

 俺が書こうとするとディフェンダーのイザベラが守りに入いる。手ごわい、先に進めない。

 

 そうこうしているとアタッカーのアイラが攻撃してくる。押し戻されてしまう。

 

 後ろからマジシャンのマイアがさらに攻撃を加えてくる。あぁ、3000文字まで戻ってしまった。

 

 だめだ、先に進めよう。文字数が4000文字まで進んだ。

 

 するとヒーラーのオリビアが仲間を癒す。その癒しが俺にデバフとして襲い掛かる。ダメだ先に進めない。

 

 なんで彼らが俺の邪魔をするのか。俺が書いているのが魔王を主人公としているからか。

 

 それでも書かねばならない。締め切りは明日。

 

 さぁ、書くのだ、勇者たちには負けられない。

 

 必死の攻防が終わりおれは最後の一文字を書き込んだ。

 

 保存、名前を付けて保存。

 

 終わった。推敲は明日にしよう。その前にツールでチェックだい。

 

 テキストエディタからコピーするのだ。

 

 全選択 コントロールエー

 コピー コントルールエックス

 貼付け コントロールヴイ

 

 よし、終わった。あとは明日だ。

 上書き保存!

 

 ファイル名は? 大丈夫。

 ファイルサイズは? ゼロ……ゼロ?

 

 その瞬間画面が真っ暗になる。

 

 ああああああ、何をやった俺。

 

 電源を再投入。起動すると無情にもテキストエディタの履歴には残っていない。

 あc

 保存したファイルは空。

 

 終わった。もうだめだ。徹夜明けで10,000文字なんて書けない。

 

 ふとブラウザを見ると前回のタブを開くか?というメッセージが表示されている。

 

 OKを押すと最後に開いたチェッカーが開かれて……ああああああ神様ぁ!

 

 俺は無事に最後の文章を取り出しテキストエディタを立ち上げ貼り付ける。

 

 何度もかくにんして保存!

 

 今度はサイズがゼロじゃない。

 

 応募サイトを確認して応募!

 

 そのまま倒れるように寝た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

徹夜の過ち 山田ジギタリス @x6910bm

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ