先輩と俺 出張版その3

夢水 四季

またね、大好き

 私は恋をしている。

 相手は家庭教師の先生。

 慶応大学に通っている超頭良い先生。

 真葛、さねかづらっていう珍しい苗字。

 最初は女の子の生徒に遠慮していたっぽいけど、私がグイグイ話すタイプだと分かってからは、先生の教え方は少しスパルタ式になった。

 

「ねえ、せんせ。せんせは大学卒業したら何になるの? 就活してる?」

「僕は社長になるよ。就活はしてない。起業の準備してる」

「せんせ、社長になるの⁉ すっご~い!」

 確かに、この先生ならば社長になっても様になるなあと思う。


 先生のお陰で私は志望校に合格できた。

 合格発表の日は先生からの卒業も意味していた。

「またね、大好き」

 先生は少し驚いたような顔をして「またね」と返した。



 4年後。

 私は就活で「真葛コーポレーション」を受けることにした。

「またね」っていう約束を果たしに。

 さあ、先生はどんな顔をするかな。

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先輩と俺 出張版その3 夢水 四季 @shiki-yumemizu

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