薔薇色の夢現で
ジェン
薔薇色の夢現で
心地いい睡魔にまどろむ頃。
このまま瞼を閉じれば眠りに落ちる。
ゆっくりと空を落ちていくような浮遊感に包まれながら。
現実と夢の狭間で不意に思う――BAR resto.を開いてからどれくらい経つだろうか。
ああ、そういえばもう半年は経ったか。
いつの間にか夏が終わり、今や冬が終わって春を迎えようとしている。
時の流れとは早いものだ。
グラスの中の溶けかけた氷がカランと音を立て、下ろしかけた瞼を少しばかり冴えさせる。
一度は立ち止まりかけた。
続けることの意味を見失い、終わらせようとも思った。
でも、常連さんたちや新しく出会った人たちに支えられて、また歩き出すことができた。
目標を達成した時、共に喜びを分かち合うことができた。
「悪くない半年だった」
口角を上げながら独りごち、俺は水滴が垂れるのも気にせずグラスを傾けた。
薔薇色の日々を送るにはまだまだ遠く及ばないが、失ったものも取り戻しつつある。
穿たれた隙間が埋められる時、いつもそこに誰かの存在がある。
その恩義に報いるためなら、俺はいつまでも愛と感謝を込めてカクテルを捧げよう。
――チリン。
視線を上げると、そこには見知った顔ぶれたちがあった。
「いらっしゃい」
いつの間にか眠気は消え去っていたが、未だ夢の中にいるような。
不思議な感覚を断ち切るように、俺は煙草に火をつけた。
さて、今夜もBAR resto.開店だ。
誰もが落ち着ける場所であれますように。
最大限の憩いを提供できますように。
そして、出会った全ての人たちに薔薇色の日々が訪れますように。
薔薇色の夢現で ジェン @zhen_vliver
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます