第10話 星野さんとデート 前編
星野様様のおかげで、課題から自由の身になった私は、ゴールデンウィーク初日から
目的地は若者たちの間で流行中のお
ぷるぷるの分厚いパンケーキに、たっぷりのホイップクリーム、その上には旬のフルーツが惜しげもなく
乙女の好みど真ん中を射抜く、期間限定メニュー。
そして、ここにもハートを射抜かれた
お目当てのカフェ目指して、かれこれ1時間徘徊していた。
…世ではこれを迷子というらしい。
山育ちですら歯が立たないなんて、コンクリートジャングルとは恐ろしい。
マップ通りに進んでいるはずなのに、先ほどから同じ所をぐるぐる回ってしまう。
てか南東に進むってなんなんだ?
何時ぞやの航海か?コロンブスなのか?
「本田さん?」
まさしく、それは神のお導きだった。
「そのお店、今日定休日だけど。」
前言撤回。神は死んだ。
ニーチェもびっくりの速度で手のひらを返す。
「そーいや星野さんはなんでここに?」
今日の星野さんは、丸襟の白地にピンクの花柄ワンピース、西洋の貴族がつけていそうな帽子(ボンネットというらしい)、大きな花柄リボンのついたバッグを持っていた。
襟にもワンピースの裾にも、ボンネットにもたっぷりとフリルがついているが、レース素材のためか、どこか軽やかで品の良さを感じさせる装いだ。
「お気に入りのお洋服屋さんが期間限定のポップアップストアを出すらしくて。」
あの星野さんにすら効くなら、期間限定とは対乙女用トップクラスの必殺魔法に違いない。
ところで、
「…ポップアップってなに?」
…最近若者は横文字が多くて、こちとらあっぷあっぷである。
「期間限定で出す店舗のことよ。
今日出店しているのはクラシカルロリータをメインのお店でクラシカルロリータっていうのはヨーロッパの伝統的な貴族やお嬢様のようなスタイルの―
「わかった。よーくわかった!」
好きなものを語る星野さんは、超輝いてるし、この珍しいテンションの星野さんを観察するのは楽しそうだけど!
…このままでは先に私の頭のキャパが限界を迎えてしまう。
「私もそこついてく!デートしよ、デート!」
「はぁ?」
百聞は一見に如かずっていうでしょ!
言いくるめながらどんどん星野さんの背中を押していく。
「そっち反対よ!」
…呆れた星野さんが先導するようになるまで、そう時間はかからなかった。
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