第12話 《期末テスト》

あと数週間で夏休み! ―――の前に地獄の期末テストが待っていた……。

正直俺はそこまで自信が無い。と言うのも1年生の頃に赤点を取ってしまい夏休み前半は補習で潰れてしまい本来の課題とは別に追加課題を出され、さらに親から5日間遊びに行くの禁止されたという嫌な思い出がある。

それに今回全教科で平均点以上取れば小遣いアップと言う親との確約もある。

欲しいゲームもあり今回は何としても良い点を取らなければ。

 

「―――と言うわけで今回何としても全教科平均点以上取らないと何だよなぁ」

「大変だねぇ。頑張ってぇ~」

「学年上位組は余裕で良いよな。はぁ……今日も帰ってテスト勉強しないと」

「昨日もそう言ってたけどゲームにログインしてたよね?」

「いや、あれはちょっとした息抜きでやってただけで―――」

「息抜きに4時間もログインねぇ~」

「うっ……」


テスト勉強をしてその息抜きでゲームにログインしたのは噓ではない。気が付けば数時間もゲームをしたのも事実だ。

 しかしどうもテスト勉強は苦手だ。宿題は出された問題を解けばいいが予習復習となるとどこから手を付ければ分からなくなる。それに集中力が続かない。

 すると柚月は何かいい案が浮かんだのか俺に提案してきた。


「それなら僕が勉強教えてあげよっか?」

「いいのか?」

「だって去年は奏汰が赤点取って納涼祭行けなかったじゃん」

「そういえばちょうど遊びに行くの禁止されているときだったな」

「ってことで今週の土曜日に泊まり込みで僕の家で勉強会ね」


週末に柚月の家で勉強会をすることが決まった。勉強会までの間、俺も出来る限りテスト勉強をした。

全教科のテスト範囲が決まりいよいよ本格的に期末テストの空気になってきた。

数日前から部活動も無くなり授業もテスト範囲を集中的に行うようになった。

 

「今日の授業も疲れた。早く帰って脳を休ませたい……」

「いつもよりペース早いからね。それにみんなピリピリしてきてるし」

「空気が重いよな。そういえば明日は何時に行けばいいんだ?」

「13時頃で良いよ。奏汰はノートと筆記用具と着替え持ってきてね」

「分かった。また行くときメッセ送るわ」


 俺は家に帰り少し休憩した後いつもより長めの自習を始めた。少しでも勉強をして柚月の負担を減らさなければ。

 翌日、俺は荷物を持って柚月の家に向かった。


「来たぞー」

「いらっしゃーい。冷房点けてあるよ」

「それは助かる。歩き疲れたわ」

「どこか行ってたの?」

「駅前の書店で問題集買ってきたんだよ。ずっと教えてもらうわけにもいかないからな」


 俺は柚月と共に部屋でテスト勉強を始めた。

 柚月は俺と同じ教科を勉強しつつ分からないところがあればその都度教えてくれた。

 しかも教え方が上手く凄く解りやすい。


「それでここをこうすると―――」

「なるほど。ってことはここをこうして―――答えはこれだな」

「正解っ! 数学は何とかなりそうだね。次は国語系やってみよ」

「国語なら自力で何とかなりそう」


 俺達は適度に休憩をしつつ問題集を解いていった。

室内にはペンを走らせる音のみが聞こえていたがその音を遮るかのように俺の腹の音が響いた。


「腹減ってきた……」

「たくさん頭使ったからね。もうそろそろ夕飯の時間だと思うからちょっと見て来るね」


 柚月は夕飯の準備が出来たか見に行った。

 その間も問題集を解いていると部屋のドアをノックする音が聞こえた。


「奏汰、ドア開けてー」


 部屋のドアを開けると柚月はご飯とおかずを乗せたトレーを持っていた。

 凄く良い匂いがする。

机の上の問題集を急いで片付けそこに夕飯を置いた。


「美味そう!」

「アニメ観ながら食べよっ」


俺達は夕飯を食べながらアニメ鑑賞休憩をした。

 ここ最近家に帰って寝るまでテスト勉強をしていたから最新話の未視聴アニメが溜まっていたことを柚月は知っていたみたいだ。

 アニメ鑑賞を堪能し風呂に入った後テスト勉強を再開した。


「ねぇ、奏汰って高校受験の時の事覚えてる?」

「いきなりな質問だな。その時の事なら少しは覚えてるよ。あの時も今みたいに寝る間も惜しんで勉強したっけ。柚月はどうせ余裕だったんだろ?」

「余裕ってわけでもなかったけどね。でももしかしたら落ちていたかも」

「ん? 何かあったのか?」

「筆記試験直前に消しゴム忘れちゃってね。購買に行く時間もなく困ってたら隣の席の人が自分の消しゴムを半分千切って分けてくれたんだよ」

「そんなことがあったのか。なんか漫画みたいな展開だな」

「やっぱり覚えてないか……」


 柚月は何かをボソッと呟いた。俺はその言葉を聞き取れなかった。


「そんでその人とは会えたのか?」

「えっと、その人は―――ごめん、あまり顔覚えてなくてね」

「おいおい。そこ重要だろ」

「僕も緊張していたからね。さてと次の教科何にしようかな?」

「それじゃぁ次はこの教科頼む」


 ここからは睡魔との戦いだ。

 エナジードリンクを飲みながら問題集を解いているといつの間にか柚月が机の突っ伏して寝ていた。

 俺のテスト勉強を見つつ自分の分をやっていたのだから無理もない。


「柚月、寝るならベッドで寝な」

「ん~……奏汰、抱っこして」

「ったくしかたねぇな」


 柚月をベッドに運んだ後、俺は独り問題集と解き続けた。

 翌週、いよいよ期末テストの本番だ。

 その日の校内はいつもより静かだった。友達と問題を出し合う人やひたすら暗記をする人、曲を聴き気持ちを落ち着かせる人などいつもと違う光景が広がっていた。

 俺はテスト開始ギリギリまで解いた問題集を見て勉強をした。柚月も自分の席でノートを見ていた。

 静かな校内にチャイムが鳴り響き短いようで長い期末テストが始まった。


「まだ問題用紙見るなよ。テストは50分間だ。机の上に出していいのは鉛筆と消しゴムのみ。それ以外は仕舞わないと減点だぞ。それじゃぁ……始めっ!」


 先生の号令と共に一斉に紙を捲る音が聞こえその直後鉛筆を走らせる音が教室に響いた。

 この緊張感久々だ。俺は深呼吸して心を落ち着かせた後問題に取り掛かった。

 

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