ありがとう、大好きでした

遼華-haruka-

出会い

第1話 始まり

暗い照明にキッチンからふわっと香る美味しそうな香り___、


「ーーねぇ、どう思う?思わせぶりなのかな...?」


バーカウンターで上品にシェーカーを振りカクテルを作るオーナーにそう問いかける。


ここはラブホ街にひっそり佇むダイニングバー

‐Sakura‐


私、綾坂 雫(あやさか しずく)はいつものごとく仕事終わりにここに来ては、バーカウンターに顔を伏せて項垂れている。


「まぁた海斗のこと〜?」


笑いながらいつものが始まったと言わんばかりの答えだ。


「だって仕事場に来るんだよ?買い物しに来るんだよ?」


海斗とは絶賛片思い中のバーの定員だ。

Sakuraとは違って、飲み屋街にあるメンズバーみたいなものだ。

こっちに就職で引っ越してきてすぐ、SNSで彼を見つけて飲みに行ったらどハマりしたってところで...戦略にまんまとハマった女です...。


その海斗が最近私が働いてる百貨店に買い物に来るのだ。


化粧品を買いに....。美容が好きな彼と化粧品の話なんかを良くする。


だけど、わざわざ私が働いてる店を教えた1週間後に買いに来るなんてもう思わせぶりもすぎるでしょってぇ、、、!



そんな話を毎回オーナーにしているせいで、新鮮味も何も無い。



「はい、できたよぉ〜オムライス。」



項垂れている私の前に出来たてホヤホヤのふわとろオムライスが置かれた。


鼻を刺激する卵の香りとバターライス、ケチャップの美味しそうな香りにパッと顔を上げる。



「美味しそう!!ありがとうございます!」



「いいえ、召し上がれん。」


オムライスと一緒にニヤニヤしたオーナーの顔が視界に入る。


不思議に思いオムライスをよく見ると、お皿の縁にケチャップで「カイト」と書いてあった。


「もうええて。」


傷をえぐられ項垂れると、「出た、もうええて」って真似をするオーナー。


いつもの流れだ。私のこのもうええて待ちを最近される。



待たれると言い難いんだけどな、。



いただきますとスプーンを手に取り口に運ぶとトロッとした卵とバターがお米に満遍なく纏われ、そこに酸味のあるケチャップがアクセントになり本当に美味しい。非常に美味しい。



「うまぁ〜。」



「ほんと?よかった。」



ニコッと微笑むとグラスを拭きながら私にオーナーが思い出したかのようにあっと言う。



「来月なんだけど、自分で言うのもなんなんだけど誕生日なんだよね俺。それでスタッフの皆が仲良い常連さん呼んで誕生日会してくれるらしいんだけど、よかったら来ない?」


あ、そういえば来月オーナー誕生日か。


ここに通って約半年、週に4回は冗談抜きでここに愚痴を言いながらご飯を食べに来ている。


ちなみに海斗のところは通って約1年だ。


海斗の店で会った子にここを紹介してもらったんだが、すっかり胃袋を捕まれ今では常連に...。


こんな私を誘ってくれてるのだ行かない訳にはいかない。


「もちろん、参加させていただきます!」


「お!ありがとう!じゃあ当時待ってるね!」



オーナーは今年で43歳か、ダンディだなぁ〜。



そんなことを思いながら参加を考えたお誕生日会。


そこで私は出会ってしまう、海斗なんかどうでも良くなるくらい大好きなあの人に...。



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