読み始めは、美しい寓話だと思いました。
願いを叶える天使と、負の願いを司る悪霊。
善と悪を描く物語なのだろうと。
ですが読んでいくと、その境界は静かに崩れていきます。
人は願いが叶うと、また次の願いを求める。
奇跡は人生を変えても、心までは変えられない。
だからこそ、この物語の主人公は踊り子の娘ではなく、人間の醜さばかりを見続け、それでも最後には人間を信じたくなってしまった悪霊なのだと感じました。
終盤、娘が願った「見ていてください」という最後の祈り。
あの一言で、それまで積み重ねられてきたすべての出来事が一つにつながり、タイトルの意味さえ違って見えてきます。
これは願いを叶える物語ではありません。
人は誰かに救われるのではなく、自分で気づいた瞬間に初めて前へ進める。
その当たり前で、何より尊い真実を、美しい寓話として描き切った一作でした。