第8話

 私はサー・ガレン、エリンと共に暖かい家で最期の時を迎えた老騎士だ。


 咳が続き、息が浅くなり、体が衰え果てたこの瞬間まで、彼女の手を握り、彼女の笑顔を見つめていた。



「エリン、最愛の人よ。私の人生はお前の存在によって確かに報われた」



 と告げたその後、私は最期の呼吸を迎えた。ふうと息を吐き出し、そのまま静かになった。胸の痛みも、咳の苦しみも、すべてが遠ざかり、とても穏やかな静寂が私を包んだ。


 私の体は動かなくなり、このボロボロの肉体はもう彼女を抱きしめることはできない。だが、私の魂はエリンのそばにある。彼女の温もりが、私の存在をしっかりと繋ぎ止めている。長い旅路で彼女を探し続け、戦いと試練を乗り越えた私のすべては、ずっとエリンと共にあるのだ。彼女の瞳に映る私の姿が、彼女の手に残る私の感触が、私を永遠に彼女のそばに留める。



 エリン。あの村で私の体の傷を癒やしてくれた小さな魔法使い。彼女の手には、不思議な力が宿っていた。戦場で受けた傷を癒し、疲れ果てた私に再び立ち上がる力を与えてくれたその魔法が、今、私の魂をあるべき場所へと導いてくれるだろう。彼女は泣きながら私の手を握り、



「ガレン、ありがとう。一緒にいられて幸せだったよ」



 と呟く。その声が、私の魂に響き、静かに私を包む。

 

 私の体はもう動かないが、魂は彼女のそばで輝き続ける。

 暖炉の火が揺れる部屋で、庭の花々が風に揺れる景色の中で、私はエリンと共にいる。彼女が星を見上げるたび、私を感じてくれるだろう。


 彼女が笑うたび、私の魂は喜びに震えるだろう。長い旅路の果てに彼女を見つけ、この家で彼女と過ごした日々は、私の人生を報われたものにした。


 そして今、彼女の手によって、私はあるべき場所へと送り届けられる。


 

 エリン、最愛の人よ。



 私はお前のそばにいる。体は滅びても、魂は永遠に。お前が癒やしてくれたこの命は、最後までお前と共にあった。

 そしてこれからも、ずっとお前のそばにある。


 小さな魔法使いエリンが、私を光の中へと導いてくれる。私は穏やかに目を閉じ、彼女の温もりに全てを委ねる。


 私のすべては、ずっとエリンと共にあるのだ。

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