第6話
私はサー・ガレン、エリンと共に暖かい家で最後の日々を過ごす老騎士だ。
咳が止まらず、息は浅く、食べることもままならず、眠りに落ちる時間が増えたこの体は、もう長くはないと自分でも分かっている。それでも、私の心は穏やかだ。なぜなら、私のそばにはエリンがいるから。私の最愛の人、私が人生をかけて探し続けた光。
「ああ、エリン、愛しい人よ」
と私は呟く。声は弱々しく、掠れているが、その言葉には私の全てが込められている。
長い旅路、繰り返される人生の中で、私は彼女を探し続けた。何度も絶望し、何度も立ち上がり、剣を手に、鎧をまとい、彼女に会うためだけに生きてきた。
その果てに、私は彼女を見つけた。そして今、彼女は私の手を握り、優しく笑いかけてくれる。「ガレン、私もずっとあなたを待ってたよ」と彼女は言う。その声が、私の心を満たす。
私の人生は報われた。六十年を超える長い年月、戦いと旅でボロボロになったこの体は、彼女を見つけるためにあったのだと、今はっきりと分かる。咳が私を蝕み、息が浅くても、エリンの笑顔を見られるなら、それでいい。
彼女の手の温もりが、私の冷たくなった指に伝わる。その瞬間、長い旅路の全てが意味を成したと感じる。
暖炉の火が小さく揺らめく中、私は彼女を見つめる。かつての私は、敵を倒し、名誉を守る騎士だった。だが、今はただ、彼女と過ごす男だ。私の目は霞み、手は震え、声は途切れがちだが、エリンの瞳にはまだ私が映っている。
「ガレン、ありがとう。一緒にいてくれて」
と彼女が言う。私は微笑み、力を振り絞って答える。
「エリン、君こそが私の全てだよ」
人生をかけて彼女を探した私の旅は、ここで終わる。報われたのだ。彼女がそばにいて、手を握り、笑いかけてくれる。それだけで、私の心は満ち足りている。肺の病が私を連れ去ろうとも、彼女との時間が私の魂を永遠に支えるだろう。私は目を閉じ、彼女の手の温もりを感じながら思う。
ああ、エリン、愛しい人よ。君と出会えたこの人生は、確かに報われたのだ。
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