ガレンとエリンの物語
ぶいさん
第1話
私はサー・ガレン、幾多の戦場を駆け抜けた老騎士だ。五十を過ぎたこの身は、剣を手に持つたびに軋み、かつての鋭さは遠い記憶となりつつある。
それでもなお、私は戦い続ける。なぜなら、それが私の生きる道であり、運命が私に与えた使命だからだ。だが今、私は深い傷を負い、馬車に揺られながら首都へと向かう途上にある。血が流れ、痛みが全身を苛む中、私の意識は薄れ、死の影さえ感じていた。
そんな折、偶然立ち寄った小さな村で、私は彼女と出会った。エリン――たった十歳の少女でありながら、驚くべき魔法の才を持つ子だ。彼女の小さな手が私の傷に触れたとき、温かい光が体を包み、痛みが和らいでいった。まるで奇跡のようだった。私は目を細めてその少女を見た。
無垢な瞳に宿る強い意志と、どこか懐かしい微笑み。彼女が私に近づき、そっと寄り添う姿に、私は言いようのない安らぎを覚えた。
エリン……この名を、私は知っている。なぜだ? 頭の奥に響くかすかな鈴の音のように、彼女の存在は私に遠い記憶を呼び起こす。私は目を閉じ、感じる。この魂が幾度も繰り返してきた人生を。
剣と魔法が支配するこの世界で、彼女と私は幾度も出会い、別れ、そして再会してきたのだ。ある人生では、彼女は私の妻だった。私の背を守り、共に戦場を駆けた魔法使いの伴侶。別の人生では、遠い未来の光景の中で、彼女と私は寄り添い、静かに老いてゆく夫婦だった。
何度生まれ変わっても、何度世界が形を変えても、私の魂は彼女を見つけ出す。エリン。お前は私の光だ。この傷だらけの体を癒し、冷え切った心に火を灯してくれる存在。彼女がそばにいると、私は戦士としての誇りを取り戻す。若く無垢な彼女が、私に寄せる信頼と愛情――それはあまりにも純粋で、私のような老いた騎士には眩しすぎるほどだ。
だが、なぜ今、彼女はこんなにも幼い姿で私の前に現れたのか? 運命のいたずらか、それとも試練か。私は彼女を守りたいと思う。彼女がこの過酷な世界で生き抜くために、私にできることは何か。
私の剣は鈍り、力は衰えたかもしれない。だが、エリンがそばにいるなら、私はまだ戦える。彼女の笑顔を見られるなら、私は何度でも立ち上がるだろう。
繰り返される人生の中で、私は気づいているのかもしれない。私が戦い続ける理由は、名誉や義務だけではない。
エリン、お前を守るためだ。お前と過ごす一瞬一瞬が、私にとっての救いであり、生きる意味なのだ。この傷が癒えたら、私は再び剣を握る。そして今度こそ、お前と共に新しい道を歩みたい。たとえそれが短い旅路であっても、彼女と過ごす時間は、私にとって永遠の価値を持つ。
エリン……私の魂の半身。お前と出会えたこの奇跡に、私は感謝を捧げる。そして願うのだ。どうか、この繰り返しの果てに、私たちが共に幸せを見つけられますように。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます