夕焼けの告白

神月 璃夢【りむ】

第1話

放課後の教室は、いつものように静かだった。窓から差し込む夕日が、教室全体を温かいオレンジ色に染めていた。


クラスメイトたちはすでに帰り、教室には私と——綾だけ。


「ねえ、綾。今日も一緒に帰ろう?」


私は机に頬杖をつきながら、綾を見つめる。綾はお気に入りの小説を読んでいたが、私の声に気づくと、そっと顔を上げた。


「……うん。いいよ。」


綾の声は小さくて、でも優しい。その声を聞くたびに、胸がくすぐったくなる。


綾と一緒に帰るのはもう日課になっていた。最初は偶然だったけれど、いつの間にか当たり前になっていた。でも、それだけじゃ足りない。私はもっと——。


風が心地よい秋の帰り道。並んで歩きながら、私は意を決して口を開く。


「ねえ、綾。もしさ、私が綾のこと……特別に好きだったら、どう思う?」


聞いてしまった。ずっと言えなかった気持ちを、言葉に乗せてしまった。


綾は驚いたように目を見開き、そして足を止める。私もつられて立ち止まった。


「……それって、どういう……?」


綾の頬がほんのり赤くなっているのが、夕焼けに照らされて見えた。


ここまで言ったら、もう後戻りできない。私は深呼吸をして、まっすぐに綾の瞳を見つめた。


「私、綾のことが好き。友達としてじゃなくて……それ以上に。」


言った瞬間、心臓が破裂しそうだった。けれど、後悔なんてしていない。


綾は視線を落とし、指をぎゅっと握りしめていた。そして、しばらくして顔を上げる。


「……私も。」


その言葉が耳に届いた瞬間、頭が真っ白になった。


「えっ……?」


「私も……幸季のこと、特別に…。」


綾は恥ずかしそうに俯きながらも、はっきりとした声でそう言った。


信じられなくて、でも嬉しくて、涙が出そうだった。


「……ほんとに?」


「ほんと。」


綾は微笑んだ。控えめだけど、確かに私に向けられた笑顔だった。


気づけば、私たちはそっと手をつないでいた。


これからどうなるのかなんて、まだわからない。でも、今この瞬間だけは——綾の温もりが、何よりも愛おしかった。


そのまま歩き出した私たちは、ゆっくりとした足取りで家の方向へと向かう。けれど、どちらともなく立ち止まり、近くの公園に足を踏み入れた。公園のベンチは少し冷たくなっていて、秋の気配を感じさせる。


ベンチに座り、静かに流れる時間を感じる。綾は少し恥ずかしそうにしながらも、私の手を握ったままだった。


「ねえ、綾。これからもずっと、こうしていられるかな?」


「……うん。でも、幸季がちゃんと私のこと、大切にしてくれるなら。」


「もちろん! そんなの、当たり前じゃん!」


思わず強く握り返すと、綾はくすっと笑った。その笑顔が、私の心をさらに温かくしてくれる。


空には星が瞬き始めていた。二人の時間は、これからも続いていく——そう信じられる夜だった。


次の日、学校での昼休み。


「綾、今日は何する?」


「うーん、カフェテリアでランチとかどう?」


「いいね!新しいメニューがあるって聞いたし。」


カフェテリアにはクラスメイトたちが集まっていた。私たちはおしゃべりしながら、いつもの席に向かった。

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