第2話 憎悪


私を助けてくれた先輩が彼女という浮気した女に虐げられている。

こんなクソ馬鹿みたいな所業が許される訳が無い。

そう思いながら目下に居る先輩を見ながら私は熱を感じる。

私を助けてくれた挙句。

人生の大切な人になった先輩が?


「ま、待て。弓親。こういうのは...」

「私は我慢が出来ませんね。先輩でいっぱいです」

「いっぱいです、じゃない!こういうのをするのは恋人に...」

「言ったじゃないですか。私が先輩を寝取っても構いませんよね?、と」

「い、いや。だから俺は...」

「...私と付き合ってくれませんか。先輩」


それから私は顔を先輩に近付けてみる。

だが先輩の力の方がデカく。

そのまま私は押しのけられてしまった。

そして先輩は口元を拭う。


「この様な行為をするには早すぎる」

「...ですかね?私には分かりません」

「弓親。お前の思いは受け取ったけど...だけど早すぎるんだよ」

「そうですか?」


私は内心でチッと舌打ちしながら先輩を見る。

先輩以上に鍛えておけばよかった。

そう思いながら。

そして先輩は「...でも弓親。お前マジに俺が好きなのか」と聞いてくる。

私は「はい。私は貴方が好きですよ。以前から」と笑顔で答えた。


「...何で俺なんかを」

「先輩は全く自覚がないから言いますけど。...私がふさぎ込んでいた時。...そして引き籠っていた時。貴方しか居ませんでした。私を助けてくれた人は」

「...それで惚れたってか?幾ら何でも極端すぎる」

「私は惚れました。それで」

「...そうなんだな」

「だから先輩。付き合ってほしいですし私は先輩の為なら今直ぐに裸になりますよ」

「そ、それはしなくて良い。...だけどそうなんだな」


先輩は考え込む。

それから私に向いてから「分かった。お前の想いは考えておくよ」と答えてくる。

私はその言葉に「はい」と笑顔になった。

そして私は肉じゃがを見る。


「先輩。もし良かったら味見てくれませんか」

「味?ああ。肉じゃがの?」

「はい。...一生懸命に作りましたので」

「...分かった」


それから私は先輩の為に器に盛る。

そして先輩に肉じゃがを出した。

すると先輩は「...相変わらずだな。お前の手際の良さ」と言う。

私はニコッとした。


「それはそうでしょう。全て貴方の為にやってますから」

「いやもう。そういうのは良いから...」

「でも不思議ですよね。先輩って。女性がセックスしたいって言っているんですよ?それなのに否定するとか」

「コラ!?女性がセ、セックスとか言うな!?」

「私は真面目に聞いています」

「真面目にって...」


先輩は動揺する。

私はそんな先輩をジッと見る。

すると先輩は「...俺はまだ気持ちに整理がついてないんだ」と答える。

それから私を見た。


「...気持ちに整理がついたらお前の言葉になるだけ応えれる様に頑張るよ」

「...そういう所が生真面目ですよね。先輩って」

「生真面目っていうか当たり前だろうなって思っているだけだ」

「...だけどそういう面も好きです。大好きです」

「そうか」


それから先輩から視線を外してから「...でも先輩。やりたくなったらいつでも言って下さいね」と笑みを浮かべる。

先輩は赤くなりながら「...」となる。

私は「...先輩も興奮するでしょ?普通」と柔和になった。


「...私はいつでも迎え入れます」

「...あのな。...お前...」

「エヘヘ。先輩大好き」


そして私は先輩の手を握る。

それから私は先輩に寄り添ってから暫く過ごした。

そうして私は肉じゃがを残して帰る。

やっぱり愛おしいな先輩は。



翌日になった。

私は部活清掃などの事で早めに登校する。

それから私は部室に入ってから掃除をした。

私は読書部というものに所属している。

その名の通り読書する部活。

私は丁寧に埃とか払って掃除した。


「おや?」


そうしているとドアが開いてから四角い眼鏡とポニテが特徴的な部長の野木かおり(のぎかおり)先輩が顔を見せた。

私は頭を下げる。

野木先輩は「おはよう」と言いながらやって来る。


「...それで。上手くいったの?昨日。痛かったの?」

「昨日ですか?...昨日は何もしてません」

「え?そうだったの?」

「はい。襲おうと思ったら逃げられました」

「あちゃー。そうだったんだね」

「はい。ちょっと残念です」


「だけど次がありますから」と私は意気込む。

野木先輩は「まあ彼の彼女さんは浮気したらしいって聞いたからね。君が寝取っても問題は無いよ」とハスハスと興奮する。

私は「ですね」と笑みを浮かべながら野木先輩を見る。


「いやー。身近でそんな面白い事が起こるとはね」

「面白い訳では無いですけど...でもまあ凄く嬉しいです」

「...だね。君にチャンスが巡って来たって事だから」


野木先輩は笑みを浮かべる。

その言葉に薄ら笑いを浮かべた私。

至極冷徹な顔になりながらも...ただひたすらに愛おしさがこみ上げる。


先輩に対して、だ。

私は裏切ったりしない。

絶対に先輩を幸せにするんだ。

そう考えながら私は作業を再開した。

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