きらら系になりたい!

のりこ

プロローグ



「みんな〜!おまたせ!」


「遅いですわもる子さん!ギリギリはやめてくださいまし!」


「そうですよっ!棄権になったらどうするんですっ!」


「もる子、ちゃんとしてもらわなきゃ困るって」


「馬鹿者が」


「ごめんごめん!おまたせ!ごめんね、江戸鮭ちゃん!」


「...は、はい」


私は緊張をそのまま声に乗せて、返事をしました。




今日こそ、もる子さんが待ちわびた日。


学園をルールで縛った生徒会との決戦の日。


私は心を落ち着けるように、今日までの日々を思い返します。


転校初日にもる子さんと出会って、その後すぐに質候しちばそうろうさんを殴り飛ばして。


第二軽音部の皆さんに会ったのも同じ日。

ほたるびよりさんは今よりもっとお喋りで、持鍍金てでらめっきさんは少し穏やかだったかもしれません。

些細ささいさんは全然変わらないですけど。

それに手伝ってくれためったらさんには、感謝してもしきれません。


それから、占い部のいのうさん。

旧きらら部、現おちむしゃの危ない五人組。

配信者のあわさん。

第一軽音部の皆様。

そして風紀委員さん。


色んな方に出会って、色んな方に助けられて、今この舞台に立つことができています。


私たちのキラキラした毎日を取り戻すため。

わくわくできる自由をもう一度皆と味合うため。

誰もが笑って「やりたいこと」ができるように。


生徒会役員の方々が、どんな能力を持っているかは分かりません。

四文字で発した言葉を実現するかもしれません。

キラキラしたエフェクトを出すかもしれません。

触れたものを希釈したり、瞬間移動したり、動きを封じ込めたり、何でも燃やせたり、物をくっつけたり、離したり...。

出会った能力者の皆様よりももっと厄介で、私たちの誰かが一撃でやられることだってあり得るでしょう。


頭を巡る戦いの日々を私の頭が巡ります。

忘れようとしても忘れられませんから。

何もできなかった私がここまで成長できたのは、きっと、いえ絶対に皆様のおかげなのですから、忘れるなんてあり得ません。


私は息をひとつはいてから、壇上に立つ生徒会の面々に目をやりました。


会長は私をまじまじと見つめて、その小さなお口をニヤリと歪ませます。


「ついに今日という日が来たのう。きらら部の面々よ」


静まり返った体育館に、会長の声が凛と響きました。


ですが、私にはその声はあまりにも遠く、微かに聞こえた雨雫くらいにしか思えませんでした。

聞こえてはいるものの、耳に入らなかったのです。

生徒会の方々と相まみえて、戦いが始まるというのに私の頭の中では、また別のあることがグルグルと渦巻きはじめていたのです。


「もる子さん...。戦いが始まる前に言いたいことがあるんですけど、いいですか?」


「ん?なーに?」


準備運動をするもる子さんは、いつもの満面の笑みをこちらに向けました。


「私たちって、きらら系になるために頑張ってるんですよね?」


「もちろんだよ!今日はそのための第一歩!生徒会長をぶちのめさないとね!」


「それなんですけど...」


「うん!」


「きらら系って戦うんですかね...?」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る