魔法使いの相棒契約

たるとたたん

序章 光魔法師の聖女様

第0話

✤ 相棒



 



 ――私の世界は、この一瞬でひっくり返った。

 

 10歳の魔法使いだけが入学を許される、日本で唯一の魔法学園。どうしても花柳はなやぎさんと話したかった私は、その敷地の奥……入った事ない薄暗い森までついて行った。そこで、私は初めて〝本物の魔法〟を見たんだ。

 木陰で舞う光の粒と君の声は、私の中で固まっていた物を少しずつ溶かしてくれて。


 先生が『魔法は人を守る力』だって言ってたけど、私にとっては人を傷付けるものだった。聖女なんてあだ名も理想を押し付けられただけで、ずっと息苦しかった。光の魔力を持つ私と、闇の魔力を持つ君……周りは先代の悲劇を理由に、私たちを〝天敵同士〟と決めつけてきた。



「今日は、色々とありがとうございました。貴女は先にココから出てください。森を出れば、また今まで通り……私は貴女に、一切干渉しませんから」



 今日君と話せただけで、魔法ってこんなに綺麗なんだって初めて思えたんだよ。

 微かに声を震わせ、視線も合わさず眉を下げる彼女。影の中に立つその姿を見て、私の体は勝手に動いていた。一歩、また一歩と足を踏み出して行く。


 

「これからは、ちゃんと自分で選ぶ! 私の気持ちをちゃんと大切にするって決めたの!」



 君が私を名前で呼んでくれたその瞬間〝聖女様〟と言う仮面は音を立てて壊れた。やっと私は、春風はるかぜ菜乃花なのかとして息ができたんだよ。

 入学式の日から、ずっとこうやってお話したかった。因縁だって私たちには関係の無い事、でしょ?



「だからお願い……花柳咲来さくら。私と……」

 


 せめて、この気持ちを君に伝えたい。

 私は、君と一緒に――







 

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