夢見ヶ丘学園戦記外伝【怪物録】

タカシ・セイヒ

狩りの始まり

第1話イタリア事変

此処イタリアはローマの活気ある市街地、市場は大勢の人々で賑わいを魅せ騒がしくも陽気な声が響く楽しい雰囲気を醸し出していた

「そう言えばもうすぐ集会ミサの時間なのにいつもの鐘の音がしないな?」

この時間になると教会で集会ミサが開かれる、それを知らせる為に毎日この時間になると教会は鐘を鳴らす、しかし既にその時間にもかかわらず、今日は全くあの大きな澄んだ音が聞こえて来ない

「おい、なんだか変な色の雲が教会の方から広がって来てるぞ!」

「本当だ、真っ赤だぞ!?」

突如として教会の方角から血で染まったように真っ赤な深紅色の雲が街全体に広がり始めたのだ、そしてソレは崩壊ひげきの始まりを意味していた


深紅の雲が街を覆う頃には各所から悲鳴が聞こえ来ていた、悪魔や怪物と形容するしかないおぞましい化け物が教会の壁を破壊して街中にあふれ出したのだ、怪物達は次々と人間達を襲い、引き裂き喰らいその血で大地を真紅に染めて行く

気が付けば街は怪物の群れに取り囲まれていた、人々は怪物達から必死になって逃げるが圧倒的な身体能力で追い詰められて行く

そこからは一方的な蹂躙劇、死体を操り生きた人間を襲わせる怪鳥の上の死霊使いネクロマンサー、人間の身体を玩具オモチャのようにチグハグな怪物モンスターへと作り替える真紅の鎧クリムゾンアーマー戦槍ヤリを携え逃げ惑う人を骨まで燃やす暗黒の焔を纏う邪神、鋭い茨の氷の蔦で雁字搦がんじがらめにされて血を抜かれ切って真っ白になった屍肉オブジェを見下ろす漆黒の翼、そして純白のボディースーツを着て白銀プラチナの翼を生やし少女が生を諦めた人間を真っ黒な泥に変えて行く

命からがら逃げる人間達を街の中央広場へと追い立てる、そして街の広場に人間達が集まった直後、奈落に繋がる巨大な穴が開いた、人々はその穴の底に真っ逆さまに落ちて行く

「第十階梯の魔術【血飛沫の奈落ブラッドホール】」

供物ぎせいはこの街だけではなかった、隣街も、その隣の街も、小さな田舎町までその狂気は感染して行った

世界を殺す儀式ワールドエンドは九分八厘までは成功していた、しかしながら呼ばれてもいない闖入者六人目が、勝手に現れて全ての天秤をひっくり返した

その後、夢見の丘の連中がやって来たせいで全てが滅茶苦茶だいなしになってしまった


此処はイタリアのローマにある大都市の一角、現在黄色い紐が張られ厳重に立ち入りを禁止されている、その理由は原因不明の大災害・・・が起こったと云う事である

「・・・大災害ねぇ?」

その立ち入り禁止の紐の前でタバコの煙を吐き出しながら独りごちる紅い長髪の女性、彼女の名前はエリザベス、吸血鬼ヴァンパイアを狩るいわゆる吸血鬼の天敵ヴァンパイアハンター生業なりわいとしている一般人である

「あたしには依頼が来てるけど、本拠地バチカンのお膝元で好き勝手されたけども、どうすんの?」

皮肉たっぷりに近くの壁に寄りかかる修道女シスターに聞いてみる、返って来る答えなど解り切っていると云うのに

「お前の依頼等知ったことではないが・・・我等の教義おしえに泥を塗り、あまつさえ我々の預かる土地ローマで勝手をした外道共を生かしては置かない!」

押し殺しているが声には強い怒気いかりが籠もっていた、当たり前である、神聖教会の本拠地バチカンの直ぐ近くで惨劇を起こされたのだ、世界規模の組織としてこんな舐めた真似マネをされて許せるはずが無い

「お前は好きに狩っていろ、我々が不心得者ふこころえもの鉄槌バツを下す!」

「好きにするさ、その過程で協力出来たらするけど」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る