REBIRTH編その2 掛川駅~新浜松駅~さぎの宮駅~西鹿島駅

「冬馬くん、ゴメン。私が寝坊したばっかりに……」

「過ぎた事は仕方ないよ。絶望的な状況じゃないから、時間配分をしっかり考えれば、まだ何とかなるよ」

 何となく感じていた嫌な予感は、残念ながら当たってしまった。夏子がまるで遠足の前の夜の園児の如く興奮した感じで、なかなか寝付けなかったみたいだ。そして朝方夏子は、ついウトウトしてしまったようで、気が付いたら集合時間に間に合わなかった。幸いにして30分程度の遅れで済んだが、天竜二俣駅の予約した転車台ツアーの集合時間が、11時15分までとなっているので、余裕を持たせたスケジュールは、ギリギリのものとなってしまった。


「本当にゴメン。寝過ごすところで……」

 そう話す夏子は、如何にも眠そうで見ていられなかった。安藤さんからの提案で、掛川駅に到着するまでの短い間だけれど、夏子を横にさせることにした。そしてちゃっかり、冬馬の膝枕で寝る夏子だった。

「先輩、夏子さんを起こさないように静かにしていてくださいね。私は夏子さんを見守っていますから」

「オレは一体、どうすればいいんだ?」

「夏子さんが起きますから、黙っていてください」

 何で後輩の指示に従わないといけないのかと、少々理不尽だと思いつつ、冬馬は夏子が起きないように、静かにスマホを操作して計画の練り直しをする。


 本来の予定だと、午前8時過ぎぐらいに新幹線の掛川駅に到着。そこから天竜浜名湖線の掛川駅へと向かい、コラボパネルの撮影とスタンプを押す。そしてここで前回、コンプリートしたスタンプ台紙を渡して景品と交換する。それから東海道線に乗り換えて、浜松駅へと向かうのだ。そして駅周辺にある幾つかのスタンプを押してから、遠州鉄道経由で、天竜二俣駅へと向かっていく。遠州鉄道の終着駅は西鹿島駅なので、ここで天竜浜名湖鉄道へと乗り換える。本来の予定では、時間の余裕を持たせたつもりだった。しかし今回の夏子の遅刻のせいで、ギリギリのスケジュールへとなってしまった。天竜浜名湖線はローカル鉄道の為、1時間に1~2本しか運行していないのである。冬馬は夏子を起こさないように、スマホで検索をして、時間を調べていった。転車台ツアーの時間縛りがあるおかげで、練り直しには難儀したが、何とか目途は立ちそうだった。

 そしてその間、安藤さんは、ずっと夏子の寝顔を眺めていた。更にあろうことか、隠れて夏子の寝顔を撮影する始末。これっていいのか?まぁ作業が捗ったので良しとしよう。


 本来の予定よりも30分程度遅れはしたが、東海道新幹線の掛川駅に到着した。短い時間ではあったが、夏子は熟睡出来たようで、随分とスッキリとした表情になった気がする。夏子の寝顔をずっと見ていた安藤さんもご機嫌のようだ。

 でも多少は余裕があるとはいえ、駅の外に出て天浜線の掛川駅に行ってスタンプとパネル撮影、景品の交換もしないといけないので、のんびりとはしていられない。冬馬達は急ぎ足で外に出る。時間に余裕があれば、徒歩10分以内の場所にある掛川城にも行ってみたい所だが、女性陣に反対されるのは明らかなので、却下した。

 東海道線の掛川駅の近辺にある、天浜線の掛川駅に到着した冬馬達は、すぐさま新しいスタンプ台紙を確保してからスタンプを押し、パネルを撮影する。切符売り場にてコンプリートしたスタンプ台紙を見せ、検印してもらって特典の限定ステッカーをもらった。本来は一人1枚の交換となるのだが、融通を利かせてくれて、秋葉さんのものも交換してもらえた。お土産物屋は9時からなので寄る事は出来ない。その代わりにパンフレット類やチラシを持ち帰った。掛川にも色々名物はあるのだから、時間の縛りが無かったら、ゆっくりと買い物をしたかったのだが。そして天浜線の折り畳みサイズの時刻表も貰って来た。これなら電車の時間をすぐ確認出来るので、非常に助かる。


 現在の時間は、9時少し前。東海道線の掛川駅へと向かい、そこから浜松駅へと向かう。掛川から浜松まで、30分弱の時間が掛かる。新幹線に乗った方が早いかもしれないけれど、それ程時間が変わらないので、東海道線で移動をする。夏子はすっかり目が覚めたので、冬馬や安藤さんに色々な事を話しかけてくる。元気を取り戻してくれてよかったものだ。気が付いたら浜松駅へと到着した。


「電車に乗るまで30分程度あるから、それまでにやれる事はやらないとね」

 冬馬は、まず近くのバスターミナルへと向かった。ここにスタンプラリーのスタンプが置いてあるはずだ。しかし、ここでも想定外の事が起きたのだった。


「どこにパネルとスタンプ台があるんだ?」

 マップにはバスターミナルとしか書かれていない。どこに置いてあるんだ?乗車券センターの方なのか?それとも忘れ物センターの方なのか?それ以外の場所なのか?時間を掛けて探したら、確実にタイムオーバーとなるので、全て回って再び浜松駅に戻ってからゆっくり探そう、という考えにすぐに至った。この方が無難だろう。

「遠州鉄道の新浜松駅に行こう。余裕が無くなったからちょっと急いでね」

 冬馬達は、浜松駅北口のすぐ近くにある遠州鉄道の新浜松駅へと向かった。切符を買ったりしなければならないが、大丈夫、まだ余裕はある。焦らなくて大丈夫だ。


 程なくして、遠州鉄道の新浜松駅に到着した。出発までには、まだ時間がある。よかった、駆け込みにならなくて助かった。まずは、スタンプを押し、コラボパネルを撮影する。前回行われたスタンプラリーの時は、新浜松駅の名称が『シン・ハママツ駅』に変更するというコラボをやっていたので、パネルの名称も『シン・ハママツ駅』のままなのは、ご愛敬だ。そして切符売り場へと向かう。共通フリー切符を購入するついでに、今回のイベントを記念したキーホルダーも売っていたのでこれも購入する。キーホルダーの裏面には、『シン・ハママツ計画』のロゴが描かれている。冬馬としては、やっぱり地方のイベントでしか入手出来ないものに関しては、買っておきたいと思ってしまうのだ。


「この『きさらぎ駅』って何だろ?」

 夏子が疑問に思ったのは、2025年6月に全国で公開された映画『きさらぎ駅Re:』のグッズ。新浜松駅にてアクリルスタンドやレプリカ切符とか販売しているのだ。

「これは、嘗て某巨大掲示板で話題になったスレから映画化されたもので、その続編だね。ホラー映画だから、見ていないんだけど。途中に寄る『さぎの宮駅』が、『きさらぎ駅』のモデルだと言われているんだ」

「ホラーかぁ。私は苦手だな。夏子さんはどう?」

「私もダメね。怖かったら、大声で叫んじゃいそうで」

 どうやらみんなホラーは苦手のようで、一緒に映画を見に行くことは無さそうだ。

(※アクリルスタンドは、きさらぎ駅の駅舎と駅名の看板等で構成されているもの。まぁ、グッズは作りづらい類のものだとわかりますが)


 時間は、10時少し前になった。始発の新浜松駅で乗るつもりの電車が到着した。何だか不気味な雰囲気の電車が到着したと思ったら、『きさらぎ駅Re:』のラッピング電車だった。『エヴァンゲリオン』のラッピング電車を見たかったのだが、残念ながら時間が合わなかった。

「途中のさぎの宮駅だけど、電車を1本ずらす事も出来ないから、停車した時に降りてパネルを撮影してすぐ電車に乗らないといけないんだ。失敗したらアウトだから、成功させたいね」

「冬馬くん、そんな事出来るの?」

「失敗の可能性もあるけれど、こうするしかないからなぁ」

 本来なら途中下車してゆっくりとパネルを撮影し、次の電車が来たら乗って移動する予定ではあった。しかしながら、1本遅らせると乗り継ぎが上手くいかなくなるので、一か八かの賭けに出るしかなかった。ここはスタンプは無いので、パネルの撮影だけ。おそらく駅のホームに設置してあるだろうパネルを素早く見つけ、電車のドアが開いて閉じるまでの時間にパネルを撮影して電車に戻る。なかなかに難度の高いミッションだ。最悪、一通り終わってから、もう一度撮影に行くという手もあるけれど、往復の時間と乗り換えの時間で結構掛かってしまうので、出来れば避けたい所だ。


 新浜松駅を出発して10分程度の時間が過ぎた。冬馬は、電車のドアの近くに立って、様子を確認している。出来るだけ早く、コラボパネルを見つけたかったからだ。自動車学校前の駅を過ぎ、いよいよ次の駅が、さぎの宮駅となる。冬馬に緊張が走る。

(いよいよか、上手くいってほしいな)

 数分後、さぎの宮駅に到着する。そしてホームのベンチの所にコラボパネルが設置してあるのを確認出来た。運がよかった事に、パネルのすぐ近くのドアだったため、冬馬は電車から降りてすぐにスマホで撮影する事が出来た。ピントが合っているか不安だったが、少々斜めにはなったけれども、割と綺麗に撮影出来たと思う。そしてすぐに電車に乗り込む。良かった、ミッション成功だ。ごく短い時間の停車時間だったので緊張したが、やり遂げた感はあった。

「先輩、お疲れさまでした。上手くいって良かったですね」

「安藤さん、ありがとう。パネルのすぐ近くだったからね。離れていたら厳しかったと思う」

 電車に乗ってからずっと緊張していた冬馬は、ようやくホッと一息付けた感がある。ゆっくり休みたいけれど、もう20分もしないうちに、終点の西鹿島駅に到着するのだ。西鹿島駅のパネルは前回撮影しているので、スタンプを押すだけだ。そして天竜浜名湖線に乗り換えて、2つ先の天竜二俣駅へと向かう事になる。一日共通切符を持っているので、切符の買い替えの必要はない。天浜線の電車が来るまで20分程時間があるので、西鹿島駅の周りを見てみたが、特に時間を潰せるような場所も無かった。


「ここが本当に同じ浜松市なのか、疑問に思えてくるんだよなぁ」

 多分、殆どの人がそう思っているだろう。でも、更に北の方に行くと、絶対『市』を名乗れないだろうというぐらい田舎になるんだよなぁ。

 そして冬馬達御一行様は、2回目の天竜二俣駅へとたどり着くのだった。



 ○○○○


 2回目のスタンプラリーとなるREBIRTH編は、実際にその順番に回ったDEATH編と違い、フィクション部分が加わってきます。(実際には何回かに分けてスタンプを集めに行っています)その為、時刻表と睨めっこしながら、辻褄が合うように書いてはいます。天竜浜名湖線は、1時間に1~2本の運行なので、話と合わせるには苦労します。流石に、ここは時刻表的に無理があるとか言ってくる人はいないでしょうけれど。


 掛川というと、お茶やクラウンメロン等が有名ですが、個人的には、桂花〇さんの葛湯が好きですね。ノーマルなものもいいですが、色々な味が揃えてあります。地味ながら時々食べたくなってしまいます。


 https://koresika.jp/?pid=24997219


 さぎの宮駅は、映画『きさらぎ駅Re:』で再び注目されるかなとは思っていましたが、それ程でもなかったですね。一応、浜松市からはロケ地マップも作られてはいるんですけどねぇ。

 それよりも、2021年9月17日に放送された『新幹線変形ロボ シンカリオンZ』の第21話は『エヴァンゲリオン』とのコラボ回なのですが、主人公たちが都市伝説である『きさらぎ駅』を捜しに遠州鉄道に乗るというストーリーが胸アツです。そして『きさらぎ駅』らしき場所で出会うエヴァのキャラクターが、ここのコラボパネルとなっているのもニクいですね。


 https://www.shinkalion.com/series2/story/6326/


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