第2話 注文票の謎(後編)

「こ、これは……!?」


ラムが驚きの声を上げる。


「答えは簡単だ。注文票を消したのは……」


ノアは、ある人物を静かに指差した。


「お前だ、ラム。」


「……にゃあああっ!? え!? ボク!??」


ラムの目がまん丸になり、耳がぴんと立つ。


「ちょ、ちょっと待ってにゃ!? なんでボクが犯人にゃ!?」


「証拠は揃っている。お前は……自分でも気づかないうちに証拠を残していたんだよ。」


ノアは紅茶を静かに置き、ラムをじっと見つめる。


「まず、注文票は意図的に丸められ、ゴミ箱に捨てられていた。適当に捨てたのではなく、一枚ずつ丸めているのが特徴だ。」


「そ、それがボクの仕業っていう証拠にはならないにゃ!」


「ならば、これならどうだ?」


ノアはゴミ箱から一枚の紙を取り出し、広げた。

そこには、くっきりとした爪痕が残っていた。


「この爪痕……まさか!」


店主が驚きの声を上げる。


「黒豹獣人特有の爪の跡……。」


「にゃあああっ!? そ、そんなはずないにゃ!!」


ラムは耳をパタパタさせながら、しっぽをバタバタ振る。


「ボクをハメたにゃ!? ノアの罠にゃ!? きっとそうにゃ!!」


ラムが慌てて手を隠すが、すでに遅い。


「それに、ここ最近、お前はやたらとテーブルの上でくつろいでいたな。」


「そ、それが何の関係があるにゃ!? ボクはただ、ノクターンのテーブルが気持ちよかっただけ……。」


「違うな。お前は、レジの近くのホルダーで遊んでいたんじゃないか?」


ノアの言葉に、店主が思い出したように頷く。


「あっ……そういえば、ラムがよくレジの近くでくるくる回ったり、飛び跳ねたりしてたな……。」


「つまり、ラムは遊んでいる最中に注文票を引っ掛けて落とし、拾ったついでにクシャッと丸めて、何も考えずにゴミ箱に捨てていた……ということだ。」


「にゃ、にゃにゃにゃ……。」


ラムは顔を真っ赤にし、耳をぺたんと伏せた。


「そ、そんな……ボク、まさかの犯人だったにゃ……!?」


「まぁ、故意じゃないのは分かっている。」


ノアは紅茶を飲み干し、静かに微笑んだ。


「だが、これも立派な事件だ。」


「にゃぁ……反省するにゃ……。」


ラムはしょんぼりと肩を落とし、店主は苦笑いしながら彼女の頭をポンポンと撫でた。


「まぁ、これからは気をつけてくれよ。レジ周りで遊ぶのは禁止な。」


「にゃ……はいにゃ……。」


こうして、ノクターンに持ち込まれた『注文票の謎』は解決した。


店内には、静かに紅茶の香りが広がっている。


「さて、今夜もまた、奇妙な依頼が舞い込む頃か……。」


ノアはそう呟きながら、新たな夜を迎える。


その時、カフェの扉が静かに開いた。


「……探偵さん、助けてほしいことがあるんです。」


静寂を破る不安げな声。

ラムはぴくりと耳を動かし、ノアは静かに微笑んだ。


「いいだろう。その話、聞かせてもらおうか。」


そして、ノクターンの夜は、また新たな謎へと誘われる——。



(今夜の事件は解決した。しかし、謎は尽きない——次回へ続く!)


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