村人たちの変化

 少年レオンを癒した奇跡の瞬間から、村の空気が微かに変わり始めた。


 これまでリリアナを遠巻きに見ていた村人たちは、彼女の存在に戸惑いながらも、少しずつ接し方を変えていった。彼女がただの流れ者ではなく、何か特別な力を持つことを目の当たりにしたからだ。


「リリアナさん……先日はありがとう」


 少年の母親が、野菜を抱えて彼女の小屋を訪れた。差し出された野菜を見て、リリアナは驚いた。


「これは?」


「ほんの気持ちです。あなたがしてくれたことへのお礼を、何か形にしたくて……」


 戸惑いながらも、リリアナは微笑んでそれを受け取った。


 その出来事を皮切りに、少しずつ村人たちは彼女に心を開き始めた。畑仕事をしていると、村の女性たちがそっと手を貸してくれる。井戸で水を汲んでいると、子どもたちが一緒に話しかけてくるようになった。


 しかし、全員が彼女を受け入れたわけではない。村の長老や一部の者たちは、彼女の力を警戒し、何か問題を引き起こすのではないかと懸念していた。


「聖女だろうが、魔女だろうが、余計な騒動はごめんだ」


 そんな声も聞こえてくるが、リリアナは気にしなかった。彼女はただ、自分にできることをし続けるだけだった。


 そして、その静かな変化の波は、やがて村全体を包み込んでいくことになる——。

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