新たなる戦いの序章

 俺たちは魔物との決戦を終え、静寂が訪れたかのように思えた。しかし、その余韻は一瞬にして崩れ去る。


「君たちの力、なかなか興味深い……。」


 黒い影から現れた男は、漆黒の衣をまとい、不敵な笑みを浮かべていた。魔物の敗北にも動じることなく、その存在感は圧倒的だった。


「貴様、何者だ?」


 アリシアが剣を構えるが、男は微動だにしない。


「名乗るほどの者ではない。だが、君たちがこれほどの力を持つのならば……少しばかり興味が湧いた。」


 彼はゆっくりと手を上げると、周囲の空気が凍りつくような冷気が広がった。俺たちは反射的に戦闘態勢を取る。


「まさか、まだ戦うつもりなの?」


 ミラが警戒の声を上げる。


「いいや、今はその時ではない。」


 男は手を振り、黒い霧とともに後方へと後退する。


「君たちはまだ、この世界の真実を知らない。だが、そう遠くない未来でまた会うことになるだろう。」


 次の瞬間、男の姿は消え、辺りにはただ冷たい風だけが残った。


「……一体、今のは何だったんだ?」


 レオンが安堵の息をつきながら呟く。


「わからない……でも、確実にただの敵じゃない。」


 俺は拳を握りしめ、決意を固める。これが、俺たちの戦いの終わりではなく、新たなる戦いの始まりなのだと。


「ギルドに戻って報告しよう。これから何が起こるのか、慎重に考えなきゃな。」


 俺たちはゆっくりと歩き出した。

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