平凡な会社員だった俺、異世界に転生したら神の加護を99個もらった件

katura

深夜のオフィス、崩れゆく意識

 時刻は午前三時。

 オフィスの中に響くのは、キーボードを打つ音と空調の微かな唸り声だけだった。蛍光灯の光がチカチカと点滅し、まるで俺の意識が消えかけていることを象徴しているようだった。


 机の上には、冷めきったコンビニ弁当の容器と、飲みかけの栄養ドリンクが並んでいる。空のペットボトルが三本、倒れたまま転がっていた。その脇には、付箋だらけの書類の山。カレンダーを見れば、昨日の予定がびっしりと書き込まれている。


「納期:昨日」「修正:即対応」


 ……即対応ってなんだよ。


 俺は溜息をつきながら、モニターに目を向ける。そこに映るのは終わらないエクセルファイル。今月分の進捗報告をまとめ、次月の業務計画書を作成し、上司が求める「すぐにできるよな?」の一言で増えた追加タスクの処理に追われる。


 肩こりは限界を超え、まるで岩を背負っているような重さだ。さっきから頭痛が止まらない。それでも指は勝手にキーボードを叩き続けていた。こんな生活が何年続いているだろう。


「……帰りたい」


 思わず呟いた言葉は、誰に届くこともない。


 周りを見渡せば、同僚たちはすでに帰宅し、俺だけがここに取り残されていた。デスクの向こうにある上司の席はすでに空っぽ。あいつは定時で帰るのが当然なのに、俺はどうしてこんな時間まで働いているんだ?


「まあ……もうちょっとだ」


 気力を振り絞り、再び画面に集中する。しかし、視界がぼやける。眼精疲労だろうか? いや、違う。瞼が重い。まるで鉛のように、落ちていく……。


 ああ、まずい……。


 次の瞬間、俺の意識は暗闇に沈んでいった。

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