第6話
「連くん、おまたせー」
千沙の声で振り返ると、集会所から出て来た千沙と真那がいた。
「おはよう。
菜々子さんはね、団地に行ってみるって言ってた。だから、三人で家探ししよ」
「……おはよう。
うん、そうだね……」
どうやら最初から二人きりの予定ではなかったようだ。
「あれーっ、連、なんか残念そうじゃない?えっ、女の子にも興味あるの?両刀?」
真那はすぐにからかってくるから嫌いだ。勝手に呼び捨てで呼ばないでほしい。
僕は真那を無視して歩き出した。
僕の後ろを女子二人が並んでついてくるかたちになった。
集会所もその周りの景色も夜と朝では見え方がまるで違う。
「でも、千沙ちゃんは可愛いからしかたないよねー。
あっ、そういえば……拓也だっけ?あのオタクっぽいキモいおじさん!昨日自己紹介のときずっと千沙ちゃんのこと見てたよ!」
女子同士のお喋りタイムがはじまったと思った。
「そうなの?私は気が付かなかったよ」
「えーっ。
てか、あいつマジでキモいよね。絶対引きこもりニートだよね」
千沙はコメントに困っているような様子だった。
きっと、人の悪口なんて言わない子なんだろうと思った。
青空の下を歩いていると少し汗ばんでくる。
泉村も初夏だ。
ここにもちゃんと季節の移り変わりがあるらしいと凌さんが言っていた。
でも、村自体は年をとらない。長寿アニメの登場人物達のように、そのままの姿で同じような一年をずっと繰り返していく。
まさに異世界っぽいと思った。
「あの二人はかっこいいよねー。篤志くんと昌也くん」
真那主体のガールズトークはまだ続いていた。
「えっと、茶髪の人と金髪メッシュみたいな人だっけ?茶髪が篤志くんだっけ?」
「違うよー。茶髪は昌也くん」
「そうなんだ……私あんまり興味ないから……」千沙が申し訳なさそうに言った。
そういえばあの二人、解散の後に一緒に出て行ったような気がしたが、勘違いだろうか。そんなことを思った。
「あっ、でも、一人興味ある人がいるよ」
「まじ?誰?」
僕も少しだけ気になった。
「奈月ちゃん!」
おそらく真那にとっては期待外れな回答が返ってきた。
「女かー。てか、なんで?」
「綺麗だし、なんか独特のオーラみたいなのがあって凄く魅力的……ねぇ、連くんもそう思わない?」
急に振られて少し戸惑った。
「まぁ……そうだね」
「えーっ、そうかなー。私あぁゆうタイプあんまり好きじゃない。千沙ちゃんの方が全然綺麗だし」
「……僕もそれはそう思う。……千沙の方が普通に美人」
少し恥ずかしかったが、本音を伝えてみた。
「……二人ともありがとう」
素直に受け入れるところもいいと思う。
そうこうしているうちにある建物を見つけた。
「あれ、拓也が言ってた商店じゃない?」僕が言った。
原始的なコンビニ、極小スーパー、そんな言葉が似合いそうだ。
僕達は中に入ることにした。
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