特にオチのない怪談集
不労つぴ
写真
これは父から聞いた話だ。
父の職場には幽霊が見える――つまり、霊感があるという女の人が働いているという。
歳の頃は僕より上、大体30前後とのことだった。
父とその女性が他愛もない話をしていると、不意にその女性が「あそこにおじさんがいます」と部屋の隅を指さした。
だが、そこは至って普通の部屋の隅で特におかしなところはなかった。
父は冗談を言っているのだと思い、「おいおい、冗談はよしてくれ」と言った。
だが、女性は「いや!ほんとにいるんですって!」と言う。
するとおもむろに女性はカバンからスマホを取り出し、部屋の隅を撮った。
父はそんなもので映るわけがないだろうと呆れていたが、女性から見せられた写真を見て驚いた。
なんとそこには、キャップを被った薄汚れた服を着ている中年の男性がカメラの方を見ている写真があった。
「ね、嘘じゃないでしょ?」
スマホと部屋の隅とを何度も見比べる父に向かって、女性は誇らしげに言った。
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