第28話 店乗っ取り。

ジャズバーの「エクワイア」のステージで、センスをフリフリして踊っている女が、フロアで、たむろってダンスをしている客たちに、掛け声をかける。フロアの客たちは、ステージのハイテンポのジャズの演奏につられて、ますます熱気を帯びてステップを踏む。


突然、ステージの女が、手にしていたセンスをフロアに投げ込むと、それまでカウンター席で、静かにして見ていた男が立ち上がった。男は、黒のロングコートのポケットから、拳銃を取り出して、「ガーン!」と、天井に一発、発砲する。ステージの女も、胸から小型の拳銃を取り出して、客たちに向ける。店のドアから男たちがどやどやと数名なだれ込んできて、客たちを包囲する。客たちは、驚いて立ちすくむ。ステージのジャズの演奏も、ぴたりと止まった。


Hは、「しまった。遅かった。」と思う。

拳銃を取り出した男は言う。

「大人しくしろ!この店のオーナーを出せ!さもないと客たちの命はない!」

「ここにいるわ。」

男が、振り向くと、ステージの袖から、店のオーナーのミセス・ジェリーが出てくる。

客たちを、包囲していた男たちは、ミセス・ジェリーを取り囲み、拳銃を突きつける。発砲した男の指示で、ミセス・ジェリーは、男たちにチェーンで拘束されて、担がれて店の外に運び出された。客たちは、啞然としている。


そのまま、男も、センスを投げた女も外に出ていく。表には黒のワゴンが止まっていて、ミセス・ジェリーは、男たちにワゴンに乗せられる。そのままワゴンは、「エクワイア」から、発進する。夜の街を逃走していく。


Hは、慌てふためくが、バーテンダーのトムとウエイターのジョンとバーテンダーのシンディーは直ぐに動く。ジョンは、お客さんたちをなだめる。

シンディーは、Hに声をかける。

「追うわよ。店乗っ取りだわ。どこのシンジケートだろう。身代金を要求してくるわ。」

男たちとミセス・ジェリーを乗せた、ワゴン車は楼蘭の街を抜けて、砂漠を逃走してゆく。ジョンは、Hと、トムと共にエクワイアのジープに乗り、車庫から、そのまま発進させる。逃走したワゴン車を追う。

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