高貴な君に
@aktkaktk
第1話
うだるよな夏の暑さに負け、目を覚ました。
住み慣れた我が家は、寝起きの開かない目でも歩けた。
高校生になり早数ヶ月、今日も青山の表札を背に駅に向かう。田舎の駅は駅員さえおらず学生がちらほらいるだけだ。
その中に十数年見慣れた顔を見つけた。
『おはー』
小川だ。凛々しい整った顔から発せられたとは思えないほどフランクな挨拶だった。
小川とは保育園からの同級生だ。
小中学校も同じだったが特別話すような仲ではなかった。彼女とは住む世界が違ったからだ。
彼女は華やかな世界で生きていた。スタイルも良く、顔も整っており、性格まで良い。それに加えて両親が教師で教育熱心のため頭も良く、身長も高いため身体能力も高かった。
例えるならば高貴な姫君だった。
対してこの青山という男は特筆すべく点もなく全て並以下。
例えるならば村人Cといったところ。
彼女とは当然の如く別々の高校に通っていたが降りる駅が一緒で、帰りの時間が被ることが多く話すようになった。
朝も電車の時間が被ると、自然と他愛もない会話をするようになっていた。
『おはよう』
スカした素っ気ない挨拶にも、彼女は太陽のような笑顔で迎えてくれた。
そんな彼女に小学生の頃から恋心を抱いていることは墓場まで持っていくつもりだった。
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます