Webtoon『五本木トマト』感想

これは間違いなく、近年まれに見る「農業×復讐×因縁バトル」の傑作でした。初めは衝撃的な事件から始まりながらも、気づけば読者はトマトとピーマンの魅力に取り憑かれ、農業に対する情熱を燃やさざるを得ない展開に。シリアスなのにどこかシュールで、熱血なのに笑えるという、唯一無二の作品でした。



◆ 第一幕:トマトが導いた暴力事件


主人公はごく普通の高校生…だったはず。ある日、都内の一等地に広がるトマト畑で、あまりにも美味しそうなトマトに出会い、「これは食べねばならない」という衝動に駆られ、つい無断でトマトを食べてしまう。


しかし、それを見ていたのが、トマト畑の管理人の息子。彼は主人公を問い詰めるが、「言い方が気に食わない」という理不尽極まりない理由で主人公はブチ切れ。怒りのままに相手を殴り続けた上、カバンの中にあったピーマンを口にねじ込むという、まさかの異常行動に出る。


結果、主人公は退学処分。しかも、殴った相手は親会社の社長の息子だったため、主人公の父親も大変な目に。毎回のように会社でオカマの社長に「もう〜ダメじゃない〜めっ!!!」とネチネチいじられる日々が始まる。


正直、最初の数話は「何を読まされているんだ?」という気持ちになるが、不思議なことに気づけば作品に没入してしまうのが本作の恐ろしいところ。



◆ 第二幕:トマトとピーマン、復讐の農業バトルへ


退学処分を受けた主人公は、一度は絶望するが、ふと思う。


「俺は、あの時のトマトに魅了されたんだ…俺が求めるのは、あのトマトを超えるトマトだ!!!」


こうして、彼は五本木に畑を持ち、最強のトマトを作ることを決意する。トマトで復讐という意味不明な発想ながら、その熱意と描写がやたらと熱く、読んでいるうちに「なるほど…最高のトマトを作るしかないな…」と読者まで思わされてしまうのがこの作品の魅力だ。


一方、殴られた息子の方もまた、あの日の事件が忘れられない。なぜなら、無理矢理食わされたピーマンが、想像を超えて美味しかったからだ。


「あの日のピーマン…あれはなんだったんだ…?」


彼は復讐というより、執念のようにピーマンを追求するようになり、自らピーマン農園を開くことを決意。こうして、因縁の「トマト vs ピーマン」の農業対決が幕を開けることとなる。



◆ クライマックス:血と土の農業バトル


作品の中盤以降は、単なる農業ではなく、明らかに異常なレベルの農業バトルへと発展する。


・「トマトを極限まで甘くするため、1日1回自身の血を畑に撒く主人公」

・「ピーマンを最高の食感にするため、毎日300回ピーマンに話しかけるライバル」

・「栄養価を極限まで高めた結果、光合成で生きられるようになりかける主人公」

・「育てたピーマンが意志を持ち、会話を始めるライバル」


と、明らかにおかしな方向に進んでいくが、描写が異様にリアルなため、妙な説得力がある。特に、作物を育てる過程での土壌改良や品種改良の技術的な話がやたら本格的で、思わず「農業ってこんなに奥が深いのか…!」と感心してしまう。


そして、迎える最終決戦。「五本木トマト祭り」にて、主人公のトマト vs ライバルのピーマンの勝負が行われる。結果はまさかの…引き分け。


だが、主人公は言う。


「お前の血はトマトのように真っ赤じゃねえーのか!!!」


これに対し、ライバルは微笑みながら答える。


「いや、ピーマンのように青いかもな」


ここで物語は終わる。最後の一言が異様にカッコよく、不思議と爽やかな余韻を残している。



◆ 総評:カオスな発想なのに、なぜか名作


『五本木トマト』は、初めて読んだ時は「何だこのトンデモ設定!?」と思わずツッコんでしまうが、読み進めるうちにどんどん引き込まれる中毒性があった。


・復讐劇なのに農業がテーマという異常性

・シリアスな展開の中に挟まる謎のコメディ要素

・なぜかしっかりとした農業知識の描写

・最後には熱いバトルと感動のラスト


これらの要素が絶妙に絡み合い、「これは…すごい作品を読んでしまった…」という気持ちにさせられる。カオスな設定なのに、読後感は異様に清々しく、まるで美味しいトマトを食べた後のような爽快感が残るのもポイントだ。


間違いなく、Webtoon界に革命を起こす作品の一つとなるだろう。

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