営業成績最下位の男性が成績No.1女性と衝突!実は彼、天才プログラマー!?

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営業成績最下位の男性が成績No.1女性と衝突!実は彼、天才プログラマー!?

ここは都内にある大手総合商社。その中でも営業部は会社の花形部署だ。だが、その一角には、異彩を放つ人物がいた。




彼の名は川村トウマ。成績はゼロに等しく、ほぼ「給料泥棒」だとささやかれている。いつもデスクに座れば動画サイトを見ているように見え、仕事に対して無気力で、やる気が感じられない。




そんなトウマに冷たい視線を送るのは、社内一の有能社員で営業部のエース、ゆき(本名は神崎玲奈)。彼女は常にトップの成績を誇る努力家だ。




「またトウマさん、帰社が夕方遅くて……帰ってきてもダラダラと動画サイトばっかり。どうせまたくだらないものを見てるんでしょう」




ゆきはいつもそう思っていた。彼女から見れば、トウマは何一つ役に立たない存在。自分が遅くまで残業している中、彼はエンタメサイトばかり見て残業代を稼ぐ、ただの怠け者にしか見えなかった。




そんなある日の朝、営業部全員が参加する定例会議が行われていた。ところが突如としてシステム障害が発生し、社員たちが資料を確認しながら作業を進める中、全員のノートPCが一斉にフリーズしてしまう。




「これは…! 急いでシステムに連絡を!」




部長の声にオフィスが一気に慌ただしくなる。パニックに陥る社員たちの中で、なぜかトウマだけが落ち着いていた。何事もなかったかのように自分のノートPCを操作し続けているのだ。




「……なんでトウマさんだけ普通に作業してるの? システムが落ちてるはずなのに……」




ゆきはその瞬間、不思議に思った。だが混乱の最中、じっくり考えている余裕はなく、ほどなくしてシステム担当が復旧作業を終えると事態は収束。けれど、トウマの存在に対して感じた違和感だけは、ゆきの中にわずかな記憶として残った。




―――――




それから数日後、ゆきは大口顧客である藤崎貿易との案件の締切に追われていた。資料を確認しながらシステムで顧客データを参照していたとき、ふとした操作ミスで大変な事態に気づく。




「あれ……何これ!? ……まさか、データが全部消えた!?」




画面には「データエラー」の文字が赤く点滅している。過去の売上記録や仕入れ履歴、在庫データまで何もかも消えてしまい、操作不能の状態だ。




「そんな、こんなのダメ! データがなかったら取引が全部ストップする……!」




焦りと混乱で頭が真っ白になる。取引先との契約に大きな支障が出れば、会社の信用問題にも発展しかねない。




「どうすれば……どうすればいいの!? 誰か助けて……!」




あまりのパニックで入力をさらに誤り、システムはエラーを返すばかり。ゆきは思わず近くに座るトウマへ怒りをぶつけてしまった。




「トウマさん! また無駄に残業代稼ぎですか!? こんなに大変なときに、どうせエロ動画でも見てるんでしょ!」




しかしトウマはまったく動じることなく、ゆっくりとゆきを見上げる。




「ゆきさん、落ち着いたほうがいいですよ」




「落ち着けるわけないでしょ! 取引先の大事なデータが消えたのよ!? 責任問題になるんだから……!」




ゆきは感情を抑えきれず、思わずトウマのモニターを覗き込んだ。そこには、予想に反して動画サイトではなく、複雑なコードの画面が広がっている。




「……これ、何?」




「少し静かにしてもらえますか? 集中したいので」




トウマは黙々とキーボードを叩き続ける。そして数分後、作業を終えると静かに口を開いた。




「データ、見てみてください」




言われるまま、ゆきが自分のPCを操作してみると、消えたはずのデータが完全に復元されていた。




「……本当に全部戻ってる……」




呆然とするゆきに、トウマは「次からはデータを消さないように気をつけてくださいね」とだけ言い残し、すっとその場を離れていった。




ちょうどそのころ、社長である田村がオフィスに姿を見せ、慌ただしい様子に声をかける。




「どうしたんだい? 何かトラブルか?」




「いえ……でも、その……トウマさんが、たった今データを全部復元してくれたんです」




田村は納得したようにうなずく。




「トウマくんはね、裏方として会社を支えてくれているんだ。元は大手企業でスーパーエンジニアだったんだが、新しい挑戦がしたくてうちに来たんだよ」




「……そうだったんですね」




ゆきは、それまで軽視していたトウマの本当の姿を知って言葉を失った。彼の存在には想像以上の責任感と努力が隠されていたのだ。




―――――




それ以降、ゆきはトウマに対する考え方が少しずつ変わり始めた。相変わらず彼は動画サイトを開いているように見えるが、裏では何をしているのだろうか――そう思うと気になって仕方がない。




「トウマさん、また動画サイト見てるんですか? ……それとも、何か裏で重要な作業でもしてるんですか?」




「どっちだと思います?」




冗談めかして返すトウマだが、その指先は静かにキーボードを打ち続けている。その姿に、ゆきは以前にも増して強い興味を覚えた。




ある日、大手取引先との商談で使うシステムが突然不具合を起こし、プレゼンテーションが進行不能に陥ってしまった。焦るゆきだったが、原因すらわからず窮地に追い込まれる。




「どうしてこんなタイミングで……! これじゃ話が進まない……!」




すると、トウマが静かにゆきの隣に現れた。




「ゆきさん、少しだけ席を外してもらえますか?」




彼は迷うことなくコードを修正し、わずか数分でシステムの不具合を解消してしまう。




「……え? もう直ったの?」




「ええ、これで動くはずです。続き、頑張ってください」




その鮮やかな対応に、ゆきは驚きを隠せない。営業のエースを自負している自分でさえ太刀打ちできないトラブルも、トウマの手にかかるといとも簡単に解決してしまうのだ。




そうして日々仕事を続けるうち、ゆきはだんだんとトウマの存在の大きさを実感し始める。そしてついに、彼が何を思ってこの職場にいるのか、本心を確かめようと決意した。




「トウマさんって、本当は何がしたいんですか? 営業の仕事が好きじゃなさそうなのに、なぜここにいるの?」




「うーん、ゆきさんみたいな人が頑張れる環境を作るためかな」




その言葉は淡々としているようでいて、ゆきの心に深く響いた。




―――――




ある日の帰り道。思い切ってトウマを誘い、公園のベンチに並んで座る。冷たい夜風が頬をかすめる中、ゆきは意を決して口を開いた。




「トウマさん、私、ずっとあなたのことを誤解してた」




「そうですか。まあ、そういう人は多いですよ」




「でも、今は違う。あなたの存在がどれだけ大切か、わかったの」




ゆきは緊張しながらも、思いのたけを伝える。




「……私、あなたのことが好き。もっと一緒に働いて、もっとあなたを知りたい」




トウマは一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐに苦笑いを浮かべる。




「えっと……ごめんなさい、ゆきさん。それ、どういう意味ですか?」




ゆきはその問いかけに思わず笑ってしまった。トウマは本当に不器用なのだ。




「つまり……私は、あなたに恋してるってこと」




「恋……ですか? あ、なるほど。そういうことですか」




その淡々とした返事に拍子抜けしそうになるが、わずかに照れたようにも見える。その様子を見て、ゆきは胸のつかえが少しだけ軽くなった。




「……言葉にしてみたら、ちょっとスッキリしました。でも、トウマさんはどう思ってるのか教えてくれませんか?」




トウマは短く考え込むように目線を外し、ポケットからスマホを取り出した。




「ゆきさん、ちょっとこれ見てください」




そこには、過去にトウマが解決してきたシステムトラブルやエラーのログが記録されていた。ゆきが困ったときに支援した履歴も多く残されている。




「……これ、全部トウマさんが?」




「僕は、感情を表に出すのが苦手で……正直、こういう場面でもどう反応したらいいのかわからないんです。でも、行動で示すほうが得意なんですよ。だから、これが僕の答えです」




不器用な優しさが、ゆきの胸にじんわりと広がる。




「つまり……少しは私の気持ちに答えてくれるってこと?」




「……そうですね。でも、ゆきさん、僕のこういうところ、普通の人にはあまり好かれないですよ」




「私が普通だと思いますか? トウマさんのことを、こんなに真剣に思ってるのに?」




ゆきのまっすぐな言葉に、トウマは初めて柔らかな笑みを見せた。そしてゆっくりと立ち上がり、向き合うように姿勢を正す。




「じゃあ、これからもよろしくお願いします。まだ恋愛がどういうものかはよくわからないけど……ゆきさんとなら、少しずつ学べそうです」




その言葉を聞き、ゆきの頬に一筋の涙がこぼれ落ちる。それは安堵と喜びが混ざり合った、温かな涙だった。




「……私もよろしくお願いします」




二人は並んで歩き出すが、しばらくの間は言葉もなく、ただ隣にいる互いの存在を感じるだけだった。冷たい風が吹く夜道で、二人の距離はほんの少しだけ近づいていく。




―――――




翌日、いつもの日常が始まっても、ゆきとトウマの間には小さな変化があった。それはまだ誰にも気づかれないほどささやかなものだったが、二人の未来をつくり始める第一歩でもあったのだ。

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