失恋から始まるファンタジック・ヒューマンドラマ。物語全体に漂う不思議で柔らかな雰囲気と、現実的な感情描写が印象的な作品です。
主人公・果歩は失恋という辛い状況に直面し、嫌でも自分の感情と向き合うことになります。彼女の内面的な葛藤が丁寧に描かれており、読み手の共感を呼びます。
彼女が縁切り神社に向かったことで、現実と非現実が絶妙に融合してきます。それは神社の御利益か。彼女の身に起こる不思議な現象が「見たくないものから解放されたい」という果歩自身の内なる願望を映し出しているようで、等身大の人間が持つ普通の感情が巧みに表現されています。物語全体を通して描かれる神社や和菓子といった和の要素が、作品に独特の温かみと奥行きを与えています。
失恋という普遍的なテーマを扱いながらも、その痛みだけで終わらず、新しい視点や希望を見出す過程を描いています。読後には沈んだ心もリセットされ、自分自身の日常にも小さな幸せや再生の兆しが隠れていることに気づかされる、そんな作品です。