第4話 感動の再会です…?
「うわっ、いざ入るとなると凄え緊張するぜ…」
無事に我が家に着いた俺だが、勇気を出せずに家の前でオロオロしていた。
第一声は何にしよう。普通にただいまでいいのか?無いとは思うけど、もう俺の事忘れてたりしないよな?ヴィネラはまだこちらでは半年しか経ってないと言ってたが、実際に会うまで不安だ…。
くぅちゃんもだけど、母さんはどんな顔するだろう。やっぱ泣いちゃうのかなあ。シングルマザーで、俺には兄弟もいないから昔からとても大切にされてきた。それが突然行方不明ときたら、精神が病んでしまっていてもおかしくない。元気にしているだろうか。
ちなみに普通忘れている筈の家までのルートもすんなりと思い出す事が出来て、迷うような事も無かった。腹は立つが、これもクソッたれのヴィネラのおかげだろう。
ま、いつまでも家の前でウダウダしてても仕方ねえ。俺は自分の両頬をパチンと叩き、気合いを入れた後ようやくインターホンを押した。
「はーい!……え?……嘘…嘘でしょ…?」
「ただいま…母さん」
「………ッ!!」
ドア越しでも分かる中の慌ただしい足音。一分もかからないうちに勢いよくドアが開けられた。
「奏多!?奏多なの!?!?」
「あはは…うん、俺だよ母さん」
母さんはまだ信じられない様子で、ずっと俺の顔を撫でていた。
そして何かを確信したように呟く。
「少したくましくなった?…でも間違いない…奏多…よかった…よかったよおおお」
「今まで本当に心配かけてごめん」
「一体何があったの?半年もどこにいたの?いきなりいなくなっちゃうから、もう死んじゃったと思って…信じてたけど…私…もう正直ダメかと…。さっきくぅも撫でてたら、さっきいきなり可愛い女の子になって…もう私わけが分からなくて…夢じゃないわよね?」
「夢じゃ無いから安心して?ごめん、後で全部話すよ」
見ていられない程大声で泣きじゃくる母さんをしっかりと抱きしめる。人目も気にせず玄関前で抱きしめ合う二人。我慢しようと思ってたけどやっぱこんなん無理だ。久しぶりの母さんの声と、温もりに俺の涙腺も限界突破していた。
そういや、これまでの事をどう説明したらいいんだろう?全く考えてないまま帰ってきちまった。記憶喪失を装う事も無理がある。くぅちゃんが人間になった事も母さんからしたら怪奇現象でしかないからな。本当の事を全部話して信じてくれるかな?
まあ、今くらいは何も考えずに感動の再会を味わいたい。お互いに落ち着いた後、ようやく二人で家の中に入った。
懐かしいなあ。記憶の中の我が家と何も変わってない。
ただ一つ、いつもは俺が帰ってくると子犬みたいに玄関で迎えてくれるくぅちゃんの姿だけが一向に見当たらなかった。
てっきり照れくさくて外で会えなかっただけで玄関では待ってくれてると思っていたが、そんな事は全く無かったようだ。
「あれ?くぅちゃんは?」
「…あの子がくぅなのかは分からないけど、とりあえずくぅと言い張るものだから奏多の部屋で遊んで貰ってるわよ」
「信じて貰えないだろうけど、その子はくぅちゃんだよ。じゃあまずは俺、くぅちゃんに挨拶してくるよ。後で全部説明するね!」
俺は早くくぅちゃんに会いたくて、返事も待たずに自分の部屋に駆け出した。
途中部屋の一室に、俺の遺影が飾られた仏壇を発見した。うわあ…俺本当に死んだ事になってんだな。
改めて、さっきの母さんの姿を見れただけでも帰ってきてよかったと思える。とりあえず俺の事を忘れていない事が分かって安心した。
アレなんだよなあ、アレ。感動の再会ってのはこうでなくっちゃ。くぅちゃんにもさっさとただいまして熱ーい抱擁を交わすといきますか!
さーて、くぅちゃんはどんな反応をしてくれるかなっと!仲良しマンチカンのくぅちゃんが一体どんな美少女になってるのかも楽しみだ。
さぞかし可愛いんだろうなあ。会った瞬間おかえりー!!って泣きながら抱きついてこられたらどうしよう。
ぐへへ。いきなりそんな事されたら、俺はもうこの溢れんばかりのくぅちゃんへの想いを我慢できそうにないぜ。
「ニャははは」
俺の部屋の中から、くぅちゃんらしき人物よ声が聞こえる。可愛いいいいい。これが人間になったくぅちゃんの声。何て萌ボイスだッ!これで「奏多…おかえり」なんて言われたらもう…ッ!
俺はまたくぅちゃんに会える喜びを胸一杯に噛み締めて、ワクワクしながら自室のドアを勢いよく開けた。
「ただいま!くぅちゃん!」
目を瞑り両手をバッと広げて待ち構える俺。が、暫く待てど何の感触もない。
それどころか返事すら無い。
あっれ〜?おかしいな。
目を開けて見れば、知らない女の子がお笑い番組を見てめっちゃ爆笑していた。
「ニャはははははは!」
もしかして気づいてない?こっちを見る素ぶりすら見せないけど…。
そこら中にお菓子が散らばっており、手を頭に添えて寝転んで随分とくつろいでいらっしゃるご様子である。
でもその女の子には確かに可愛いらしい猫耳と尻尾が付いていた。マンチカン特有のホワイトクリーム色、愛しのくぅちゃんの色だ。だとすると彼女がくぅちゃんだとしかもう考えられない。
俺は気を取り直して、今度は一層元気良く彼女に話しかけてみる。
「たっだいまー!くうちゃん本当に久しぶり!!帰ってきたよー!!!」
一瞬ピクピクと動く猫耳。ようやく気づいたその女の子は一回だけ尻尾をフリッと振った後、ゆっくりと振り返った。
「あー…うん。おかえりー」
そしてめちゃくちゃ目を細めて面倒くさそうにそう言った後、再びテレビを見始めてしまった。
「ニャはははははは!」
まるで俺がいない物かのように、また笑い始めるくうちゃん(?)
…
……
………ん?そんだけ?
あまりにも想像とかけ離れすぎているんだが?え?感動の再会はいずこ?ここはどこ?私は誰?貴方は本当にくぅちゃん?
「くうちゃん!くうちゃん!俺だよ俺!分かる!?てかくぅちゃんだよな!?合ってるよね!?」
「何だよぉ〜うるさいニャぁ…もうっ。奏多でしょ?奏多。分かるわよ!そんくらい」
こっちを見もしないで返事だけする女の子、もといくぅちゃん。
名前を呼ばれた事からくぅちゃんじゃない説も否定され、俺はたまらず側に駆け寄って泣きながら彼女の肩をブンブンと揺り動かした。
「くうちゃん!くうちゃああああん!!」
「ニャにするんだよおっ!近い!近いニャあああ!もうっ!息が臭いニャあああ」
「酷い!酷いよおおおくぅちゃああん!」
我ながらあまりに気持ち悪いが鼻水を垂れ流して涙を流して詰め寄る俺。
会って早々息が臭いって、そりゃ無いぜ。ヴィネラが言ってた事は本当だったのかよ!
顔を真っ赤にしたくうちゃんが俺を押し返そうとするものの、それを許さない俺。 一進一退の二人の攻防が続く。
そこで初めてしっかりとくぅちゃんの顔を真正面から間近で見た。ぱっちり大きなお目目。猫耳と尻尾と同じホワイトクリーム色のサラサラヘアーを肩まで伸ばしている。色白で肌にはシミ一つ見当たらない、超絶美少女ではないか!
何より特筆すべきは、その豊満なお胸!クロエ達と比べても全く遜色ない!揉み合ってる時に一瞬身体に当たったが何とも形容し難い柔らかさだ!恋心がある分、もしそれを触れる機会があれば、俺は…俺は…ッ!!
いかんいかん!こんな時にまで変な妄想を…。そう思った時くぅちゃんが俺を押し返す手を止めた。
ん?口をパクパクしながら指を刺して顔をより一層耳まで真っ赤に染めているぞ?
「ぎニャああああああああああああ!!!変態っ!この変態ぃぃぃぃ!!」
何事かとくぅちゃんが指差す方向を見てみると――
俺の息子さんが異様な程の膨らみを見せていた。
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