異日本女衒事情

R・S

繁華街の酔っぱらい編 その1

「さぁさぁ!安いよ!今なら2000円で60分飲み放題!」


「ねぇねぇ!そこのお姉さん!ちょっとウチの店で飲んで行かない?」


「ちょっと君、許可もらってやってんの?ちょっと話聞こうか?」


「えぇ〜!!マジで!別れちゃったの?!」


「クスン……そうなの…マジぴえんだし…」


「よぉし!今日は俺の奢りだぁ!!」


「「「キャプテンあざーす!!」」」




 とある中堅都市のある程度栄えている駅前にある繁華街、その一角で俺は……




「チキショー!何だってんだよクソがっ!うぃ〜…」




 自棄酒をかっ喰らって立派な酔っ払いと化していた。

 何でいつもならすぐにアパートに帰って寝るだけの生活だった俺がこんな所にいるというのも、きっかけは些細なことかもしれない…ただ単に上司に怒られただけだったり、怒られた原因が同僚のデートで早上がりして業務を押し付けられた事だったり、総務の気になるあの娘が給湯室で女子達で俺の加齢臭臭そうとか男談義してた事を聞いてしまったことだったり……今日は本当に厄日だった…




「くそっ!思い出したらムカっ腹が立ってきたぜ!もう明日の事なんか知るか!呑みまくってやるぅ!」




 俺は千鳥足でヨタヨタしながら近くの入れる店を探してウロウロしていた、すると…




「うおっとぉ?!」



「あいたっ!」




 近くの路地から出て来た人物とぶつかってしまい、尻餅をついてしまった。




「すみません!大丈夫ですか?どこか怪我とかしてませんか?」




 一瞬で頭にきて怒鳴り散らしてやろうとしたが、ふと今日の上司の姿を思い出した…


 ……ここで怒鳴ったら、気分で怒鳴るあのバカ上司と同じじゃないか……




「……あー…いや、大丈夫だ。こちらもフラフラしてたからお互い様さ…じゃあ俺はこれから飲み直すからこれで……」



「……ちょっと待ってもらえません?飲み直すって事はこれから時間がある感じですか?」



「…?まああるっちゃあるけど……宗教とかはお断りだぜ?」



「そんなんじゃないですよ、ただ単にもスッキリしませんかってお誘いでしてね…」




 改めて相手を見ると、年頃は20代前半から30代前半、40には行ってなさそうな青年と呼べる年代だろう、そんな人物から女を紹介すると言われても戸惑いが先に来るものだ。




「おいおい、そんな若いのにそんな商売かい?悪い事は言わないから違う職探す方がいいんでない?」



「はは、ご心配なく、趣味と実益兼ねてますから…で?どうします?お兄さん酔ってても理性的ですから、五万円の所一万でどうです?」




 五万が一万とはかなりの値引き……しかし俺は油断しない……!こんだけ値引きがあるという事は出てくるのはガノンド◯フかドン◯ーコングばりのモンスター級……!大昔まだ右も左も分からない若造の時にフリーで入ったお風呂屋さんで写真はピー◯姫、実物はクッ◯大王という文字通りのトラウマモンスターと出会った経験がある俺に隙は無い……!




「ふっ…そう言って出てくるのはモンスターって落ちだろう?生憎俺は勇者ではなく一般人だからね…今回は引くとして…「ちなみに向こう見てもらえます?」…うん?」




 そう言われて路地の奥を見ると1台車が停められており、運転席からショートカットのスポーツ系美人な女の子がこっちに手を振っていた。




「最低ラインがあの娘レベルって言ったら安心します?」



「OK、話をしよう。」




 あ〜!酔っているから判断力鈍っていても仕方ないなぁ!かぁ〜、またバカ話増えちゃうよ!そう酔っぱらってるから仕方なくなんだよ!飲み明かすつもりだったから財布に諭吉さんがたくさんいるのもあるから〜!仕方なくなんだよ〜!かぁ〜!




「さぁさぁ、こっちから乗って下さい。」




 頭の中で頭の悪い言い訳を考えていたらいつの間にか停まっている車、ワンボックスカーの後部座席に案内されていた。

 この車で店に行くのか?…にしてもさっき乗っていた女の子はどこ行ったんだ?降りた様子は無かったのに…




「では一万円頂けますか?」




 いつの間にか運転席に座っていた彼にそう言われて思わず諭吉さんを1枚渡してしまった…


 …これで外から仲間が来てボコボコにされるなんて事は無いよな……?


 酔いが少し覚めてきたのか、だんだんしっかり考える事が出来るようになってきた途端恐怖心が沸々と湧いてきた…




「はい、一万円確かに…ではこれをどうぞ。」



「………何だこれ?」




 手渡された物を見て思わずそう言ってしまった…それもそのはず、紐からぶら下がっているのは見るからに適当なスプレーで色付けしたんだろというばかりの金色に塗られたプラスチックで出来た小判型札だったのだ…




「それを周りから見える様に提げておいて下さい…が待ってますよ…ふっふっふっ…では僕はこれで、後は彼女に聞いて下さい。」




 そう言うと彼は運転席のドアから外に出て行き、それと同時に助手席側からさっきの彼女が入って来た。




「ハァ〜イ!こんばんはお兄さん!分かってるけど、一応札見せてもらえる?」



「えっ?あ、ああ…はい…」



「はい、確かに!じゃあこれをこうして…っと!」




 そう言いながら、紐をスーツの左上ボタン止め穴から通して結び、札がぶら下がるようにしてくれた…




「いや…これはどういう…」



「大丈夫大丈夫!それでその辺り…そうだねぇ適当なお店に入って飲んでみたら?面白い体験が出来ると思うよ!……でももし何にも無ければ…私と朝までするって事で!ニシシシシッ!」




 そう言うと助手席から降りて後ろの反対側ドアから入ってきた彼女に手を掴まれ、車から降ろされてしまった。




「じゃあ楽しんでね!あっ!そうそう帰りはここでいい時間に待ってるからねぇ〜!」




 そう言い残し彼女を乗せた車は走り出して行った………




「………えっ?お店は?……えっ?……騙された……?」



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