Ⅰ・Trip Storm

正義感は禍の元

第2話

―――ジリリリリ…







…うぅ~…


うっさいな…



遠くで目覚まし時計の金切り声が聞こえる。柔らかな布団を頭から被り直して、無意識ながらにその音を遮断しようと試みた。







――ジリリ…バシッ!!!



「……好い加減起きなさい!綺亜羅ッッッ!!!」


『ふぁっ!!?』



金切り声が止み、代わりに怒鳴り声が耳元で響いた。ぼやけた視界に、母が叩いて止めた時計の文字盤が映る。




『…っるさいなぁお母さん…まだ7時58ふ……ってはぁ!?』





――――――ガバッ




『なんでもっと早く起こしてくんないのよ!?』



時計の針を二度見して、漸くまたやらかしたことに気付いてベッドから跳び起きた。



「起こしたのにアンタが起きないから悪いんでしょ?しかも目覚ましは7時半から鳴りっぱなしだし…」



それに7時半でも充分寝過ぎ!と、母は呆れて溜め息をつき部屋を出ていった。





『う~…ねみゅい眠い…』



伸びをして見上げる窓から入って来る朝陽が眩しい。こんないい天気の朝はのんびり…



…じゃなくて。



『…マジ遅刻っ…!!』



洗面所になだれ込んで超高速で顔を洗い、歯を磨き、寝癖を直す。





…んもうっ!!なんであたしの髪はこんなウネウネしてんのよぉぉお!!!



しぶといウネウネを水で撫で付けて(全く効果ナシ)、制服をテキトーに着て…



『行ってきまーすっ!!』



勿論朝ご飯を食べる暇もなく玄関を飛び出した。




この寝坊女ことわたくし成瀬 綺亜羅なるせ きあらは17歳、花の女子高生♪



…の筈なんだけど。



『あと7分っ!!』



今時の女子高生とは思えないほどボサボサな頭で、しかも尋常ではない猛スピードで海岸沿いの坂を駆け登っている。


あ、今「ぜってー彼氏いないだろお前w」って思ったそこのアナタ!大正解!!(涙目)


しかしそんなことを嘆く前に、今はとにかく遅刻回避が最優先っ!!!





――――――ガラッ!!!



『おはよっ』



――――キーンコーン…



教室に足を踏み入れた一瞬後に、チャイムが鳴り響く。



…わーいっ!!勝ったぁ!




何に勝利したかは謎だったが、とにかく遅刻回避は大優勝だ。




「はよ~綺亜羅。まーたギリギリ?」


「お、新記録じゃん」


『マジでっ…い゛っ!?』



思わずガッツポーズをキメたが突然、後ろから頭をベシッと叩かれた。



「なぁにが新記録だか…」



振り向くと、呆れ顔の担任が名簿であたしをぶったらしいのがわかった。



「記録更新よりあと5分早く起きる努力しろよ?」


『はぁ~い…』


頭をさすりながら謝ると、教室中にくすくすと笑い声が広まった。

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