限りなく敷居の高い映画の物語
ちびまるフォイ
マルチ・映画・バース
これまでのあらすじ。
前作「ヴェール・オブ・カオス」のヴィランは死んでいなかった。
彼の開発したレガシー波を受けたウォーロックは、
ネクサスプロトコルの一員として今まさに立ちふさがった!
前作を見ている人には激アツの展開である!
「まさかお前が生きていたなんて……!」
「私はこの世界に愛想が尽きた。
無能な人間を排斥し、今一度世界の秩序を取り戻す」
「そのために……エンシェント・コアを使うのか!!」
エンシェント・コアとは前々作に登場し、
その後行方不明となった時空や過去を超越改変するとんでもアイテム。
これを読んでいる懸命な読者は当然履修しているだろうから
驚きと緊張に満ちたこの展開に釘付けだろう。
「私も最初は貴様とこの世界の立て直しも考えた。
しかし、チーム"ネクサス・シンジケート"が解散した今。
この世界は大黒柱を失い混迷を極めている」
「待て」
「なんだ」
「なんだそのチーム名は」
「知らないのか。コミット38巻から登場した設定だ」
「え……?」
コミックを見直すと確かに存在していた。
慌てて表情を作り直す。
「そうだな。確かにそんなチーム存在していた。
ちょっと存在感薄くて忘れてた」
「彼らが世界を導いてくれると信じていた。
しかしそれも今は叶わない」
「なぜだ!!」
「リーダーであるアイギスがダークスターライトに染まり
今は悪を倒すダークヒーロー・ヴァンガードになったからだ」
「そ……そうなのか……!?」
「知らないのか?」
「……」
「ドラマシリーズのシーズン2でやっていただろう」
「サブスク会員登録していないから……」
「……」
「……」
「とにかく、世界のリーダーが不在となり混迷を極めたこの世界。
私がこのエンシェント・コアですべてを作り直す!」
「お前の作った世界が理想的であるなんて、どうして証明できるんだ!!」
「ドラマシリーズ・シーズン1で失敗したMrシンパシスとは違う。
私はこの世界のあり方を明確に思い描ける!」
「だからドラマシリーズの話はやめろ!! わからない!」
「わからないのはお前が勉強不足なだけだ。
文字を勉強していないのに、本のおもしろさがわかるわけないだろう!」
「や、やめろーー!!! それを使うな!」
エンシェント・コアが光り出す。
時空を超えた大いなる力が世界全土に広がる。
映画の外伝シリーズである「ブライトウォーカーズ」に出てきた
多元的宇宙量子世界の概念が世界に適用される。
「さあ、世界の新たな門出を祝おう!!」
今まさに旧世界が終焉を迎え、新たな世界が爆誕する。
そのときだった。
鋭いビームがヴィランを貫いた。
「ぐぅっ!?」
エンシェント・コアは力を弱め世界の崩壊は免れた。
「誰だ! いったいどこから!?」
「この顔を……忘れたのかい?」
戦いに割って入ったヒーローはマスクを脱いだ。
「き、貴様は!!!」
「そう……。俺はTV版フレイム・キャバルリーさ。
映画版では死んだかもしれない。
だが、お前が時空を捻じ曲げたおかげで
TV版の俺がこの世界にやってこれたのさ」
「て、TV版だと!? 20年以上前だぞ!?」
「そしてこのビーム銃はOVA版から持ってきた」
「廃盤になったOVAからの武器だと!? 誰がわかるんだ!?」
「熱心なファンは今ごろ涙を流しているころだろうさ」
「くっ……! 映画の横長スクリーンに適用できないくせに!
4:3のブラウン管の亡霊どもがーー!」
「いくぞ! クライマックスだ!」
「ああ!!」
「「 スカイフォール・アセンショーーン!! 」」
二人の合体技がヴィランを辛い抜いた。
TV版の最終話にすべての能力と引き換えに放った最終奥義。
それを現代のヒーローと協力して使うアツい展開。
「グアああ!! ば、バカなぁーー!」
必殺技を受けたヴィランは体が崩壊を始める。
もうエンシェント・コアも使えない。
「勝った……!」
「やったな!」
二人のヒーローの共闘により世界は無事救われた!
エンドクレジットが流れる。
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監督
ジャスティン・カイル
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劇場が静けさに包まれる。
長大なエンドクレジットが終わると、最後の映像が流れ始めた。
「ククク……これで世界が救われたとでも思っているのか……」
崩壊を続けるヴィランは最後に言い残した。
「別の劇場では違うマルチエンディングを迎えている!
次回作では別の劇場のエンディングが採用されるかもだから
このエンディングだけで安心するんじゃないぞ!!!」
客は急いで別の劇場へ足を運んだ。
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