第2話 アトラスの樹

『アトラスの樹』―――中世ヨーロッパ風デザインが目立つダークファンタジー色のオープンワールドゲームで、広大なフィールドを隅々まで探索することが出来る。

舞台となる地の名前は カリムといい 獣や魔物の他超常の生物が跋扈する地だ。

この地に接する海の水平線の彼方には世界樹と呼ばれる半透明の大樹が存在しているが、大樹はこの世界の理を具現化したもので、作中ストーリーやゲームシステムでも密接に絡んでくる。


レベルアップによるステ振りがあり 武器や防具に装備制限が設けられて装備毎の要求能力値よりステータスが低いと装備出来なかったり本来の性能が出なかったりするため育成時の能力値や装備の取捨選択が鍵となる。


基本ソロプレイで数少ないマルチプレイの内容として決闘場での対人戦が賑わっていた。


俺自身も本編終了後DLC踏破済みの後ストーリーを周回するか決闘場に引きこもり対人戦を狂った様にやっていたが、極度の負けず嫌いだったので対人戦用に能力値を調整して、対戦相手がどんな構成でも勝てる様にバランスよくステ振りしていた。


死にゲー特有の高難度ボスとの緊張感溢れるピリピリとした戦闘やその中で流れる壮大なBGM、攻略中現れる敵モブや悪辣な罠を掻い潜り進む未知への好奇心からの探索や戦利品、その他、数多のNPCイベントや分岐ルートによる派生マルチエンディング等が魅力だろう。


ゲームの大まかなあらすじは、世界樹に巨大な穴が発生することから始まる。この異変は人為的に起こされたもので、これにより世界の理が歪み世界全体が狂気と混沌へと堕ちていく事となる。ゲームの主人公は調律師として世界樹が使わした存在で、世界樹を再生する使命を背負いカリムに降り立つ―――といった感じだ。



では、この世界樹の歪みとは一体なんなのか?



この世界のレベルアップという仕組みは 他者を殺害した時に、殺した者の魂を経験値として己に取り込む事で起こるものだ。この際 魂はすぐには取り込まれず一度、世界樹を経由する。世界樹は魂の濾過機であり、まっさらとなった魂を取り込む事で安全かつ正常にレベルアップすることが出来る。

歪みとは異変による世界の理の強制的な変質と機能不全であり、正常な経験値の取得とレベルアップが出来なくなることを指している。

魂の濾過機能が働かなくなったことで、魂の記憶や能力を浄化出来ずそのまま取り込むことになってしまう。

一見なんの問題も無さそうにみえるが、濾過のしていない魂とは呪いと同じである。二度、三度では湖に小石を沈める様なものだが繰り返して行くにつれ、自身の記憶の境界が曖昧になり、自身の身体は徐々に変容してバケモノの様な姿になっていく。

殺した者の魂が澱の様に自分の身体に溜まっていく。いつ自分が理性を失い、収え込んでいるものが自身に覆い被さってくるかに恐怖する日々。


生きるも地獄 死ぬも地獄、地の獄はこの世にこそあったのだ。


この世界の住人が狂ってしまうのも、致し方ないというものだろう。


ときにこの世界、神が何柱か存在するが 世界樹の異変を境に狂っていく様になるためゲームの主人公と敵対し、ボスとして登場することもある。というか、ボスとして登場する奴の大半が狂っているのでデフォルトといってもいいだろう。


さて……。そんなこんなで地獄of地獄な世界に転生したので、俺は生き残るために行動あるのみってわけだ。














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現代日本人死にゲー世界に転生す 食う寝る遊ぶ @darusou

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