クリエイターまもるクン
@kagikakukakumachine
クリエイターまもるクン
ある男がペンを握りしめながら頭を抱えていた。その男の目の前にあるディスプレイにはバッテンマークが映っていた。このバッテンマークの表示は、この男が使ってるソフトウェアの一つの機能である。ソフトウェアの名前は「クリエイターまもるクン」という。
男が幼少期の頃、画像生成AIがリリースされ、多くのクリエイターの作品がAIの学習に使用された。例えば、イラストを学習したAIは、テキストで指定されたキーワードに応じた新たな画像を生成することができた。これにより、絵を描く練習をしていないような人でも気軽に画像を生成できるようになった。しかし、中にはイラストレーターのイラストの絵柄を模倣できる画像生成AIも出てくるようになる。絵柄はアイデアであり、著作権法上の「具体的な表現」ではなかったため、絵柄を模倣しただけのイラストは著作権侵害と見なされなかった。このような法制度下での画像生成AIに対する反発が大きくなった。そして、このような声に押されて「創作者の作品群に共通する創作的表現」という形でイラストレーター固有の「絵柄」に権利が与えられるように法改正が進められた。こうして、他人の絵柄を模倣したイラストを画像生成AIで生成することはできなくなった。
そして、その流れで生まれた画期的なソフトウェアが「クリエイターまもるクン」であった。「クリエイターまもるクン」は、ペンタブを使ってイラストを作成できるペイントツールであったが、AIを用いた画像生成機能はついていない。このソフトウェアの特徴は、AIを用いた絵柄の判定機能にある。このソフトウェアで作成されたイラストは瞬時に絵柄の判定がされて、他人の絵柄と同一又は類似の範囲に含まれると判定された場合には、警告表示のアイコンがディスプレイに表示される。この警告表示のアイコンがバッテンマークである。バッテンマークがイラストの上に重畳されて表示されると、イラストを保存することができなくなる。男はこのソフトウェアを使っていろんな絵柄のイラストを描いたが、尽くバッテンマークが表示された。他人の絵柄を侵害する可能性があるということだ。
男は煮詰まった状態を変えようと気分転換のために外出しようと考えた。玄関のドアを握って男は呟く。「こんなはずじゃあ…」
男は企業からイラスト作成の受注を受けた。イラストレーターとしての初仕事だ。彼は、子どもの頃から、趣味で二次創作を中心にイラストを描いていたが、イラストレーターとして仕事をすることを決意してから、やっと獲得した仕事だった。依頼内容には条件がついていた。その条件は、納品物は、絵柄判定を含む権利判定機能を備えたソフトウェアで非侵害判定がされたイラストであること、というものだ。
このようなソフトウェアの機能は、画像生成AI出現以後、画期的な機能としてもてはやされた。この機能は、「AIにはAIで対抗する」をコンセプトに開発された機能である。画像生成AIが生成した画像に対して、予め登録された他人の著作物との類似度を、絵柄の類似度も含めて瞬時に判定し、一定の類似度以上の画像に対して警告表示を出す。これが当時のニーズと合致した。その当時、法改正によって無事に絵柄も権利化できるようになったのだが、そこでひとつ問題があった。それは、絵柄の権利範囲の特定だった。絵柄がどこまで似ていてどこからが似ていないのかの線引きが難しく、人間の主観的な判断で客観性を見出すのは到底不可能だったのだ。そんなタイミングでリリースされたこの機能はこれこそAIの有効活用と言われ、クリエイターがこぞって自身の著作物を登録するようになり、この判定機能を全てのソフトウェアや画像投稿可能なアプリやウェブサイトで標準装備することが求められた。結局、完全な標準装備は叶わなかったが、一部のソフトウェアやアプリに実装されて、訴訟リスクを下げたい企業などが活用するようになった。
男に依頼をした企業もそんな企業のひとつだった。男も企業の方針に反対する気はなかった。彼自身、クリエイターたちが画像生成AIと戦っていた時代、訴訟を起こしたクリエイターにカンパをしたりと、イラストレーターとして当然、画像生成AIには反対していたし、今も他人の著作物の権利を侵害する気はない。企業の仕事を受注してから、それまで使っていた安価なペイントツールを卒業して、シェア率は業界2位だが判定機能の信頼度が最も高いと言われる「クリエイターまもるクン」に移行し、イラスト作成を始めたのだ。
「自分には才能ないのかな」
男は近所の河川敷を歩きながら自問していた。自信はあった。趣味の二次創作とはいえ、フォロワーは多かったし、自分の絵柄が好きだと言ってくれるファンも多い。ウェブサイトや頒布会での販売は軒並み完売して、有料のリクエスト依頼もそこそこの収入も得ていた。ただ、自分にしか描けないオリジナリティのあるイラストを描く仕事がしたかった。そこに舞い降りてきた企業案件だったのだ。しかし、クリエイターまもる君は、男が描いた絵を他人の絵柄と同一又は類似のものだという結果を示し続けた。自分は甘かったのか。オリジナリティというものの本質を理解していなかったのか。いくら考えても答えは出なかった。描くしかない。描きまくるしかない。自身のクリエイターとしてのプライドが心が折れそうな自分を励ます。
しかし、これは仕事だ。仕事には締切がある。自分のオリジナリティを模索する時間は残っていなかった。とりあえず企業の担当の人に連絡をして状況を早めに説明したほうが良いか。それとも、時間ギリギリまで頑張ってオリジナリティあるイラストを描ける可能性にかけるか。悶々と考えていたら、いつもの散歩コースが終わり、自宅についてしまった。担当に電話しようか…。自室でスマホを握り、担当の番号をじっと見つめる。今、時間は?大丈夫。嫌なプレッシャーを感じながら番号を押し始める。手には汗を握っている。なんて言われるかな。使えないやつだと思われたら?これで仕事の発注がなくなることとかあるのかな。まだ駆け出しなんだし、失敗のひとつやふたつくらい…。発信ボタンを押す。プルルル…ガチャ。
「はい、テンテンエンターテイメントのヤマダです。」
「お世話になっています。イラストレーターのスズキです。」
「お世話になっております。どうかしましたか?」
「すみません、実は、依頼していただいたイラストが納期までに完成しなさそうでして…事前にご相談をと思いまして…」
「あー、本当ですか。えーと、何か問題でもありましたか?こちらの指示内容に問題があるようなら言っていただければ」
「いえ、指示内容に問題はないんですが、私のオリジナリティの問題といいますか、判定機能でオッケーの判定がなかなか出てこなくて」
「えっ、そうなんですか…。んー、まあこちらとしても他人の著作物を侵害するリスクがあるとちょっとね…最近では絵柄警察?って言うんですか?ネットで炎上してAIで模倣したイラストだとか言われて、AI使用の有無の証拠の開示を求める凸電とか増えたりといろいろ厄介なんですよ」
「はい、それは重々承知しているのですが、私のイラストのオリジナリティの問題で…」
「いやね正直判定機能に引っかかるってあまりないケースなんですよね…うーん、オリジナリティの問題…もしかして、スズキさん、クリエイターまもるクン使ってますか?」
「え、はい、そうですが」
「あー、そういうことか。いや、最近ではね、作品を登録してるイラストレーターの数が多くて、昔からイラスト描いてて作品を登録済みの人以外は、オリジナリティの空きがほとんどないらしいんですよ。だから、スズキさんみたいな新規参入者がイラストを描いてもどこかの誰かの著作物の絵柄に抵触しちゃう。なんせ過去何十年分のイラストレーターの著作物がデータベースに登録されてますからね。ありとあらゆる著作物やその絵柄の範囲を認識してわずかな違いを出すのはとても人間には無理って話です。」
「え…、いや、でも、いろんなイラストレーターさんが次から次へと新しい作品を出してるわけですし、私も頑張って模索すればオリジナリティある作品を作ることができると思ってまして」
「スズキさんは過去何十年分のイラストレーターの著作物を把握できるんですか?似たようなイラストの絵柄の違いを理解できているんですか?流石に無理でしょう。既に登録されてる側のイラストレーターなら大丈夫だと思いますが、そんなイラストレーターでもちょっと描き方が変わっただけで警告表示が出てしまうんで、自分の過去の作品をトレースしてるって話もあるくらいです。」
「…でも、あ、新しいイラストレーターさんの作品が御社の広告に使われてるのを最近も見かけましたし。不可能ってわけでは…」
「新しいイラストレーターさんってサトウさんかな?サトウさんは最初からクリエイターまもるクンじゃなくてアイアイペイント使ってるそうですよ。」
アイアイペイント。業界シェア1位のソフトウェアだが、しかし、このソフトウェアにはAIによる権利判定機能の他に画像生成機能がついている。権利判定機能も判定結果を参考情報として提示するのみで、イラストは保存可能となっている。今でも非クリエイターがアイアイペイントを使って、無断学習したAIによる画像生成で大量の画像をネットに垂れ流している。私もこのソフトウェアの存在は知っていたが、それは画像生成AI登場時に問題の発端になったソフトウェアだからだ。企業から権利判定機能に関する条件が提示されたときも一番に検討から外した。
「アイアイペイントですか。確かにあそこの判定機能は、判定結果の表示は出ますが、参考情報として表示してるだけで、イラストの保存は可能です。そもそも判定機能で非侵害判定が出たものじゃないとダメなんですよね?」
ヤマダは言いにくそうに述べた。
「いやいや、判定機能というか画像生成機能の方ですよ。アイアイペイントは、判定機能がついてますから、他人の著作物との類似度の算定ができるらしいんです。それが画像生成機能にもついていて、データベースにある他人の著作物の絵柄と非侵害判定が出るように類似度のパラメーターを調整して画像生成ができるみたいです。」
男には衝撃の事実だった。
「え…じゃあ、サトウさん、AIを使ってるんですか?」
「そういうことになりますかね。今や新規参入のイラスレーターさんはみんなそうですよ。あ、一応、これオフレコでお願いしますね。建前上、AI使ってたら叩かれちゃいますから。まあ、こちらとしては判定機能で非侵害判定出てるならなんでも良いですよ」
そうして電話は終了した。途中からいろんな考えが頭をよぎり最後の方の会話はあまり覚えていなかった。スマホを眺めながらしばらく呆然としていた。電話の結論はなんだっけ。いや、期限を延ばすとかどうするとか具体的な話は特にしてない。ただ、アイアイペイントの話をしただけだ。それはつまり、ヤマダさんは明言しなかったが、アイアイペイントを使って期限内にイラストを納品してくれれば良いという話なのだろう。
男はおもむろにアイアイペイントのウェブサイトを開く。唾棄すべき相手。しかし、自分にはもう時間がない。これは仕事だ。プロならクライアントの要望が優先されるべきであって、自分のこだわりなど…。でも、ここで使ってしまったら全部が駄目になる気がする。いや、他のイラストレーターも使っているらしいし…。と、とりあえず使ってみて、駄目だと思ったらまた考えよう。
こうして、男はアイアイペイントをインストールしてアプリケーションを立ち上げる。画像生成機能には、生成する画像のベースになる参照画像が登録できる。男は自分が書いた1枚のイラストを登録する。次にパラメーターの調整欄を見る。確かに類似度調整機能のオンオフがあった。説明によれば、これをオンにするだけで、データベースにある膨大な量の著作物や絵柄との類似度を調整するようにパラメーターの計算がされて画像が出力されるとのことだった。類似度調整機能をオンにして画像生成ボタンを押す。男は自分が犯罪者になった気分だった。
しばらくして4枚の画像が出力された。男が画像を見ると、男が書いたイラストをベースに絵柄が少し変わった画像が出力されていた。男は、これは自分の中からは出てこないであろう絵柄だと感じた。
「これが誰の著作物や絵柄とも被らないオリジナリティのあるイラストなのか。ん?もしかして、このイラストを手本にすれば自分のオリジナリティの探求ができるってことじゃないのか。チェスとかだと、AIと人間が協力した場合が一番強いと聞くし。自分のオリジナリティさえ確立できれば、AIに頼らずともイラストが描けるようになるに違いない。」
男は、ひとまず、生成された4枚の画像の中から好みの画像を選択し、AI特有の細部のミスを修正して期限内にイラストを納品した。もちろん判定機能の結果は非侵害判定が出ていた。これで仕事は完了。男は罪悪感を抱えることとなったが、自分のオリジナリティ確立に向けた方策が男にはあったため、すぐに気持ちを切り替えることができた。
男はさっそく納品したイラストの絵柄を再現できるように練習に取り組んだ。手本になる絵柄の特徴を再現するように新しいイラストを描いて判定機能にかける。しかし、新しく描いたイラストは侵害判定が出た。男は手本の絵柄の特徴を掴みきれていないのだと考えて、ソフトウェアの絵柄固定機能を使って、手本となるイラストの絵柄と同じ絵柄のイラストを何枚も出力した。それらを見比べながら何が特徴なのかを学習する。そして、その特徴を再現するようにイラストを描いて判定機能にかける。これを何度も繰り返した。ソフトウェアの類似度判定機能では、手本の絵柄との類似度を表示できるため、類似度が高くなるように学習とイラスト作成を繰り返す。そして、とうとう類似度が規定の類似ラインを超えた、男は、手本なしで、手本の絵柄を再現したイラストを描けるようになった。ディスプレイに映るバッテンマークを見ながら男は安堵した。自分のオリジナリティに到達した!
男はそれからいくつかの企業からイラスト作成依頼を受注する。指示に従って作成したイラストはどれも侵害判定が出なかった。男はオリジナリティある絵柄を見事に自分のものにする。彼にはもうアイアイペイントは必要なかった。男は、クリエイターまもるクンに戻ってプロのイラストレーターとして自信を持って活動し続けることができた。
その日も男は企業から依頼されたイラストを描いていた。そこに1本の電話がかかってくる。男が電話に出ると、相手はテンテンエンターテイメントのヤマダさんだった。
「スズキさん、SNS見ましたか?」
「え、なんですか?」
男が自分のSNSを見ると通知がたくさん来ていた。通知は、DMの受信通知や直近の投稿に対する返信の通知だった。内容を確認すると、誹謗中傷が多かった。どうやら、テンテンエンターテイメントの依頼で男が最初に描いたイラストが、ゆずりんごすももというイラスレーターの絵柄に酷似していて、盗作や画像生成AIの使用が疑われてるようだった。男は理由が分からずSNSのトレンドを確認した。「盗作疑惑」や「画像生成AI」などのトレンドとともに、自分のペンネームやテンテンエンターテイメントの名前が出ている。炎上の発端を確認すると、ゆずりんごすもも本人が自分の絵柄と男のイラストの絵柄を比較して、類似点をいくつも挙げて盗作を指摘する投稿をしていた。これにSNSが同調した。中には侵害判定機能にかけて非侵害判定が出たことを指摘する投稿や、類似点はありきたりな表現に該当する部分であって、創作的表現が類似してるわけではないなどという擁護側の投稿もあったが、SNSの論調を変えることはできていなかった。さらに、同時期に公開されていた男の他のイラストへのあら捜しが始まっていて、このイラストレーターの絵柄のパクリだとか、あのイラストレーターの絵柄に似ているだとか言われ始めていた。
男は混乱していたが、それでもイラストのオリジナリティには自信があった。全て非侵害判定は出ていたし、この絵柄は自分が苦労して会得したものだったからだ。
ヤマダさんはあまり焦ってはいないようだった。
「とりあえず弊社としては事実確認をした上で社外向けに説明をするための文章を出すことになると思う。」
「分かりました。あの、私はどうすれば?」
「特にこちらからお願いすることはないです。それで、確認なんですが、非侵害判定が出てたのは確かですよね?」
「はい、確かです。今やっても同じ結果になると思います。」
「あと、一応、ゆずりんごすももの絵柄を参考にはしていないですよね?」
「はい、正直、今日まで存在を知らなかったです。」
「そうですか、それから、画像生成AIは使ってないですよね?」
男は、使ってないと答えようとして、血の気が引いた。最初のテンテンエンターテイメントのイラストだけは画像生成AIのイラストが基になっている。ヤマダさんとアイアイペイントの話をしたのだから…。ヤマダさんは分かってるはず。どういうことだ?
ヤマダがさらに問う。
「どうなんですか?」
「えー、…画像生成AIで出力したものに加筆しました。」
正直に答えてしまったが、これで正解なのだろうか。何が正解なのだろう。
「そうですか。まあ、分かりました。ありがとうございます。」
それからしばらくしてテンテンエンターテイメントから説明文が出た。内容は、外注したイラストレーターが画像生成AIを使っていたということ、会社としてはイラストレーターが使っているツールの把握をしていないということ、非侵害判定は出ているということを説明したものだった。これでテンテンエンターテイメントとしては説明を尽くしたということなのだろう。SNSの論調も、テンテンエンターテイメントの監督不行き届きという意見も出ていたが、現役のイラストレーターが画像生成AIを使っていたということのほうがニュースバリューがあるようで、男の言い分待ちのターンになった。
私も何か言わねばならない。男はどう書こうか悩んだ。テンテンエンターテイメントの担当からアイアイペイントの使用を示唆されたことに言及しようかと考えたが、証拠は残ってない上に言い方も曖昧だったし、最終的に判断したのは自分自身だったわけだから、言い訳できることでもないように思えた。やはり自分はオリジナリティのある絵柄でイラストを描いているということを素直に書けば良いのだろう。自分の絵柄は今やデータベースにある他人の著作物のどの絵柄とも非類似なのだ。男は、最初の依頼では画像生成AIを使ったが、絵柄は判定機能で非侵害の判定がでていたこと、その後、画像生成AIが出力した画像の絵柄を会得したこと、現在でも自分のイラストの絵柄は非類似/非侵害の判定が出ていて、オリジナリティがあることなどを説明する投稿をした。
投稿してからすぐにSNSでは大きな反応があった。
「AI絵が模倣なのにAI絵を模倣するとかもはや意味分からん」
「ただの人力LORAで草」
「というか、ゆずりんごすももの絵柄をパクっていることの説明になってないのでは?」
説明は逆効果だった。結局、男は、盗作クリエイターの烙印を押され、毎日、似たような内容の誹謗中傷のDMや返信がつくようになり、自身のSNSアカウントを消すことにした。
その後、男はイラストレーターを辞めて広告会社に就職した。会社では、広告に使うイラストや写真を、アイアイペイントを使って出力する仕事をしている。あの事件以降、画像生成AIを使っていることの露見を恐れた多くのイラストレーターが軒並み企業案件のイラストを描かなくなり、二次創作市場に移っていったことで、企業は自前で画像を生成するようになっていた。男がディスプレイを見ながら画像の出力を待っていると、隣の席の同僚が声をかけてきた。
「スズキさん、知ってます? さっき聞いたんですけど、イラストレーターのかしわさん、企業案件から引退するらしいですよ。またリスト更新しなきゃだ」
「え、知らなかったです。理由は何ですか?」
「いや、詳しくは私も知らないんです。担当によると、年齢によるものらしいんですけど、まあ、かしわさん、以前から、自分の過去のイラストをトレースするような仕事が増えたってぼやいてたみたいですから、もう嫌気が差したんじゃないですかね。」
「へえ…」
男のディスプレイに非侵害判定の表示がされているのを見ながら同僚は言った。
「AIにしかオリジナリティが出せない時代がやってきますね。」
「いや、まあ、自分には、オリジナリティというものがなんなのか良く分からないですけどね。」
男は保存ボタンを押しながらそう呟いた。
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