浦島太郎は幼なじみのフキと結婚したい
菊池ゆらぎ
第1話
昔、海の近くに浦島太郎という若い漁師が住んでいました。彼は貧乏でしたが心の優しい青年で、年老いた母親と暮らしています。
フキという可愛い幼なじみがいて、いつかは結婚したいと思っています。
ある日、いつものように浦島太郎が漁をするために浜辺へ向かうと、子どもたちが集まっています。近寄ってよく見ると、子どもたちは亀をいじめているのでした。
「お、亀か。亀汁にしよう」浦島太郎は、子どもたちに小銭を握らせ、亀を手にしました。
「おじさん、ありがとう!」と、子どもたちは行ってしまいました。
ところが亀は言葉を喋り、
「亀汁にはしないで下さい!お願いします!助けてくれたお礼をしますから」と命乞いをするのです。
「そうか、じゃ、助けてやる。俺も実は亀汁は食ったことはないからな。ははは」
「ありがとうございます」
言われるままに亀の背中にまたがった浦島太郎は、そのまま海中を進んでいきました。
不思議なことに、海の中でも息ができます。亀と浦島太郎は、どんどん海の底へ潜っていきます。そこには、浦島太郎が今まで見たこともないほど立派なお城がありました。
そのお城、竜宮城では、美しい乙姫が浦島太郎を出迎えてくれました。魚たちの音楽や舞、数々のごちそうでもてなされた浦島太郎はすっかりいい気分になりました。乙姫のような女性には出会ったことはなく、
「確かに美しい。だけどあの肌の白さはどうだ?病気なのかな」と浦島太郎は首を傾げるのでした。
翌朝、浦島太郎は
「おもてなしに感謝します。しかしそろそろおいとまさせていただきます」
乙姫は目を剥いて
「早っ!…昨日来たばかりではありませんか!」
「いえ、私には老いた母親がおります。きっと心配しているでしょう…それに結婚を約束している女性も」
「それは知りませんでした。どのような娘なのですか?」
「飯屋を営んでいる父親を手伝っています。名前はフキと言いまして、元気な働きものです。実は漁師を止めて父親の跡継ぎとして働かないかと言われているのです。漁師の仕事の合間に見習いをしているのです」
乙姫はため息をついて、
「そうですか、ではこの玉手箱をあげましょう。しかし、絶対に開けてはいけませんよ」
「そんな土産は結構です。それよりそこにあるサザエを少し分けていただけませんか?皆に食べさせてやりたいのです」
「勿論差し上げますよ。…こちらの玉手箱をお持ちいただけるなら」
見ると亀が目配せしています。持っていけと言っているのです。
面倒だなと浦島太郎は思いましたが、笑顔を作り、
「では、いただいてまいります。ありがとうございます」と言いました。
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