1-2話
闇を挟んで二つの光が対峙する。
私に話しかけてきた女性は、穴の開いた脇腹から血が湧きだしている。私が開けた穴だ。火薬の匂いと足元で元気よく跳ねる薬莢。私が撃ったことの証明材料だ。沈黙が流れてきて、どうもがいても溺れる。
「あえっ、えっと、あの」
自分が放った言葉にならない声が、呼吸するためのもがきであった。謝罪。弁明。もしくはそれに準ずる何か。混ざりあった言葉たちが、口から出てこようとせめぎあった結果出てきた鳴き声は情けない。
「えっと、ごめ…」
「申し訳ありません班長。ノックをするべきでしたね。」
とりあえず謝ろうと言葉を発すると、彼女は冷静に、的外れな謝罪を私にぶつけてきた。何事もなかったかのように部屋の電気をつけて私に近づいてくる。会話はキャッチボールというが、いきなりフォークで投げてこられたらキャッチするのは難しい。
「なにか軽食でもおつくりしましょうか?そろそろ夜も開けますので朝食にでも…」
「待って待って?なんで?」
私が位相を変えたことなどなかったかのように話を仕掛けてくる。怖い。こっちにずかずか近づいて来る。こっちがグローブをしていないのにボールを投げ続けるなよ。運よく当たった場所が内臓の間を通ったのだろうか。でも血が出ているのになあ。
「なんで、とは?何かございましたか?」
「えっ?痛くないの?」
「えっ?」
「えっ?」
質問の意図がわからなかったのか、彼女は歩みを止める。血が出ているくせにやけにコミカルに反応してくるな。おかしいだろ。普通撃たれたら人って死ぬものだろう?
「え、ごめんね。撃って。痛いっしょ?」
知らない人なのになぜかタメ口で話してしまった。よくない。
「…班長?すみません、質問の意図がよく…」
彼女は子供のように物わかりが悪いな。わからないことあるんだ。YesかNoで答えられる質問なのに。
「痛くないの?そこ」
「…あー。まあ別に。そこまで痛くないので。」
「あっそうなんだ。ごめん変なこと聞いて。」
「班長、あの、もしかしてなんですけど…」
「大丈夫か班長!?」
巨漢が部屋に飛び込んできた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます