特別魔獣対策課十二班

粉洗剤

プロローグ

0話

声が聞こえる。やさしさに包まれたような声。

遠くから嗚咽も聞こえるような気がする。

また声が聞こえる。その吐息が肌で感じられる程に近く。

どこからかぱちぱちと小さく弾けるような音も聞こえる。

顔のすぐ近くから声がする。女の人の声。大きく包むように。

がらがらと、崩れる音がした。建物から大切な一部がかけていく。

寝転んでいる私を、顔を覗き込んでしゃべる声がする。言葉に呻きが混じっている。

目の前は暗い。どこにいるのか。ぼやけた視界に影が映る。

声がする。聞こえるはずのない声。目の前の化け物から。女の人の声。

私の顔を、その牙で今にもかみ砕こうとしているかのように、近く。

セラフのように美しい声が、その大きく醜く毛でおおわれた化け物からする。

リンゴのようにさわやかで甘い匂いが、目の前の化け物からする。

ソファに寝転んで寝ていた私の目の前に、化け物がいる。

廃墟の建物の中に、私と化け物だけが、まるで相思相愛であるかのように顔を近づけて、いる。

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