一人の時間
夏休みがついに始まった。
もう室内ではクーラーがないと生活できないような温度で、毎年暑くなっている気がする。
俺はいつもより1時間ほど遅く起きて、朝食をとると机に向かった。
今日は特に予定がないので大量の課題を消費しようと考えている。
茜たちとは明後日から遊ぶ事になっている。
藍はモデルの仕事が忙しいようで、俺が今机に向かっているその時も仕事をしているのだろう。
ほんとによく頑張ってるよな〜
俺はふと机のすみに置いていた雑誌に目が行く。
これは本屋に寄ったときに少し前に買った、藍が表紙を務める雑誌だ。
俺はその時好きな作家さんの新刊小説が出たので買いに来ていたのだが、雑誌コーナーを通ると何故か立ち止まって見てしまうほどにその雑誌は光り輝いて見えた。
おっといけない、勉強を疎かにしてはいけない。
再び机の上の参考書に目を落とすと、一件の未読メッセージ通知がスマホに表示された。
「電源切るの忘れてた.....」
俺は勉強をするときはスマホの電源を切るようにしている。
しかしそこに表示された名前とメッセージは無視できるものではなかった。
(助けて、変な人につけられてる)
藍からの短い文章、それに付け加え位置情報マップのスクショも送られてきた。
時間的に仕事帰りだろう。
そして、昨日の夜最後にメッセージを送ったのが俺だったから、トーク画面の一番上に俺があって、とっさに連絡したのかもしれない。
俺は急いで着替え、戸締まりも忘れて家を出る。
幸い藍から送られてきた場所は近く、走れば10分ほどだ。
精一杯の力を足に込める。
頼むから無事でいてくれ!
まだ10時ごろだが、夏というのもあって太陽は高く、体中から汗が吹き出す。
曲がり角を曲がると、見慣れた後ろ姿と、それを尾行している白T姿の中年男性を視界に捉える。
「藍!!」
俺は息切れしながら叫ぶ。
俺の存在に気づいたのか、白T男はキョドりながら逃げていく。
振り返る藍の目には涙が溢れていた。
「俊..........ほんとに来てくれたんだ」
「私もう今日ここで死ぬんだと思ってた」
「本当に....ありがとう」
藍は涙を拭いながら呟いた。
「当たり前だろ!」
「俺に連絡してくれてありがとうな」
「あと......」
「なんだ?」
「俊ねぐせひどいよ」
「え?」
俺は急いで髪を確認する。
あ......
俺の髪はスパイ◯ァミリーのアー◯ャの髪飾りのように角ばっていた。
俺は急いで髪をかき下ろす。
「急いで家を出てきたんだ、許してくれ......」
「俺の家近いし1回寄って行かないか?」
「え?いいの?」
「まだ近くにあの人いるかもだし、俊くんがいいなら」
「なら向かおうか」
俺たちは落ち着きながら歩みを進めた。
雑談をしているとすぐに家に着いた。
「どうぞ上がって」
「お邪魔しま〜す」
こうして藍は俺の部屋へとやってきた。
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