切なく、そして強い感情がグサグサと刺さってくる作品でした。
主人公の「大地」は、「空香」という少女と二人で会い、彼女の書いた小説を読む日々を送る。
空香の書いた話の中では、決まって誰かが自死する。
空香は言う。「『自死』を描くのは、『小説の中にその行為を閉じ込める』ため」だと。
小説の中で誰かにその選択を取らせることにより、自分自身はその選択を取らなくて良くなる。
そんなことを言う彼女に対し、大地はある日、一つの「呪い」をかけることに……
登場人物二人の名前の「対比」がとても印象的でした。
大地と空。本来は交差することのない二つ。それが二人の関係性を象徴している。
空香は名前の通り、放っておけば「空」へ行ってしまうかもしれない。でも、今は「大地」の傍にいる。
彼女にとっての「幸せ」とは。彼女にとっての「呪い」とは。
だから大地は「呪い」をかけることを決めた。空香には「空」ではなく、「大地」に縛り付けられているようにと。
彼の持つ切ない想い。そして強い想い。自分自身の純粋な想いを「呪い」と表現し、エゴであるかのように捉える彼。
いつかは二人にとってそんな「呪い」が「願い」に変わる日が来るのだろうか。
短い中でもいくつものメタファーが込められ、強く考えさせられる作品でした。