不安な僕と
本の虫と珈琲豆
先の見えない不安へ
彼女は不安を爆発させた。寝起きはとても良い状態だっただけに、心がしんどくなる。睡眠が浅かったと言っていたから、そのせいもあるかもしれない。けれど、どちらかというと、就活の話題がきっかけだったのかもしれない。彼女は就活に対して極度に恐れているようだった。もちろん、それだけではないだろう。自分の言葉や性格と、彼女自身の考えとの間にギャップがあって、苦しんでいる可能性もある。無意識に発した何気ない言葉が、彼女には深く刺さっているのかもしれない。はたまた、自分の知らない可能性だって十分にある。
寝起きの彼女は、いつも通り前向きだった。午後の予定を楽しそうに話してくれた。そんな中、ふと自分が転職活動のことを話した。正確には「呟いた」程度だ。それは彼女に向けた言葉ではなく、どちらかというと、自分自身に対する喝入れのつもりだった。僕は今、しばらく務めた仕事をやめ、転職活動をしなければならない状態だ。
その瞬間、彼女は急に黙り込んだ。そして、静かに涙を流した。言葉を失った後、スマホをいじり始める。SNSや漫画で、感情を紛らわせているのだろうか。そして、ぽつりと一言。「何もかも嫌になった。」その言葉の後、放心状態で涙が頬を伝った。
これも、だいぶ見慣れた光景だ。けれど、慣れていてもやっぱり心にくるものがある。自分は心の中で、どうしたらいいのか思考を巡らす。こういう時、どうしてもうまく言葉がまとまらないものだ。言いたいことは喉から出かけているのに、何かが邪魔して実際に出てくる言葉は断片的で、伝えたいことがうまく伝わらない。毎回、もっと準備しておけばよかったと思うが、なかなかできない。
最先端の注意を払い、不安に共感したり、気分転換を提案してみたりするが、彼女はまるで人形のように反応しない。まるで一人で話している気分になる。実際にはそうなのかもしれない。
こうなったら、しばらく彼女をそっとしておく手段に出る。以前は怖くてできなかったことだが、彼女自身がそうしてほしいと言っていたこともあるので少しでも彼女の意思を尊重しようと思っての選択だ。この手段は正直不安だ。だけど二人で話し合ったこともあり、彼女がそうしてほしいという願いでもあり、いくつかの書籍や記事にもそんなアドバイスが書かれていたから今は納得してこの手段をとる。
とりあえず、朝ごはんを用意することにした。うどん。定番のレシピだけどより少し丁寧に、自分自身の気分が沈まないようにと味付けに拘ったりして心を込めて作った。料理が終わる頃、彼女は言った。「ご飯食べない。1人で全部食べていいよ。」その言葉に、心の柱がぐらつきそうになるが、なんとか倒れるのをこらえた。
いつもなら後回しにするようなトイレ掃除や洗濯を済ませて、シャワーを浴びる。予想していた通り、その隙に彼女は外へ出かけていった。今日は単発のバイトだから、しばらく帰ってこないだろう。この取り残された気持ちをどうにかするために、色々と試してみる。今この瞬間、こうして文章を書くことで、少しは思考と距離が置け、心が楽になる。しかし、心の重りは完全には取れない。それでも、それを無理に取り去ろうとはしない。まずは、その重さを受け入れることから始める。
受け入れた上で、自分のためにできることをしていこうと思う。今日の予定を確認し、やりたいことをどう進めるかを考えたりする。散歩でもしようか、と思いながら、大好きなコーヒーを淹れる。
しばらくしたら、いつものように彼女は戻ってくるだろう。おそらく戻ってきてくれる。彼女は、そういう人だから。心のどこかで、そう信じている自分がいる。願いも込めて、そう思う。まだ一緒にやりたいこともあるし、彼女自身が、自分の人生に意味を見出し、責任を持つ日が来ることを祈る。無理に変えようとは思わない。人を変えるのは至難の業だし、焦ってしまうと、最悪、お互いが壊れてしまう。
色々と思考を巡らせた後、自分は改めて今日の予定を確認し、やりたかったことをどう進めるかを思案する。散歩に出かける。
不安な僕と 本の虫と珈琲豆 @spyair2032
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