六章 10

「いったい!」

 私の前でその鉄拳が下されました。さっきまで私と話し合いをしていたルーナはランさんに思い切りゲンコツをされて苦しんでいます。それでも私が突き飛ばした時より痛そうな反応している。

「全く、あなたは!」

「ランさん、私が悪いんです。あんまりルーナのことを「お黙り!」……!」

「これは従者として説いているんです」

 ここまでの蘭さんは初めて見るかもしれないです。ルーナがものすごく泣きそうな顔をしているんですけど、ごめんなさい、今回は私の手が及ばないようです。それを感じ取ったのかより絶望した顔を出していましたけど、許されることなく連れていかれそうになっていました。

「最後に一言! 一言だけ言ってもいいですか!」

 ルーナが最後の足掻きとして何か言ってますが、あんなに恐ろしくなったランさんが許すんで「いいでしょう」……すね

「ええ、コホン。ルミエル様、私はあなたの従者です。あなたのわがままも理不尽も全部受け止めます、それがあなたの願いなら」

「――」

「だから、歩んでください。どんなあなたでも私はあなたのことをついていきます、敬愛します。だから、自分を怖がらないで」

「――」

「ルミエル様の敬語のない姿、良かったですよ」

「では、ルーナ。いきましょう。ルミエル様、一刻も早い快調の報告をお待ちしています」

「――」

 ルーナを引っ張ってランは部屋を出て行きました。最後の言葉に私は何も答えることはできませんでした。

「はぁ」ボフン……

 もう何も考えられないくらいに疲れてしまいました。さっきルーナを突き飛ばした時に散らかった部屋には一旦無視をして。

「ルーナ……」

 彼女とは程々に長い付き合いです。思えばあの時にはもう敬語を使って皆さんと話していた。

「つい、突き飛ばしてしまった。私の力でそんなことをすればどうなるかわかっていたのに」

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