五章 10
「とりあえず、お前はすぐに倒す」
「なら、やってみるといい。俺は……」
「おしゃべりはもう終わりだ」
殺し屋は俺から一切目を離していないのに俺がすでに急接近をしているという事実に驚愕しているだろうな。構えた腕と俺の胸が当たる。確信がある。今までのリーチを活かした攻撃では急接近した俺に対して十分な威力を出せない。それは俺もまた同じだ。腕の振りが最小限しか使えない状況下ではいかに人体の急所をつけるかにかかる。
「ウグフ……!」
「俺みたいな奴はな。人を壊すのに慣れてるんだよ」
鳩尾を突手し、そこを庇い防御の薄くなった肋骨を振りを使って叩きつける。突手で痛めた内臓が響いて、もう碌に戦える状況でもないだろう。まだ常人より頑丈だから吐血はしていない。
「なんて強さ……!? 人体破壊の達人か?」
「内臓をやった。今のお前は十分には動けないだろう」
気絶していないだけ大したことだ。爪の跡が服どころか肌にもくっきりと跡が残るほどについている。そしてそんな状況でもまだ動こうとしていた殺し屋の男を冷ややかな目で見下ろす。
「終わった……のですか?」
恐る恐ると言った雰囲気で俺に話しかけてくるルーナ。流石に真面目な場面に対して無駄な明るさと言ったものはなかったが色々と気を使われているのは流石になんとなくわかるが、しんみりとされるのはなんか違う感じがする。ついでにガキの方は完全に俺のことを怖がっているし。仕方がないと言えば仕方がないが今は本当に勘弁してほしい気持ちでいっぱいだ。あんまり吐露したくない部分を言ってしまった。それがいいことか悪いことかなんて俺が決めることではないとわかってはいるがな。
「終わりだよ。えらく面倒な寄り道をしたが、書類はマクロンに渡ったはずだ。詐欺師の息もそう長くは保たないだろ」
「なあ、これで依頼完了か?」
「ん? ああ、依頼はこれで終わりなのかな? 寄り道の多さでわかんなくなってくるけど」
そう言って、俺たちは殺し屋を引きずって小屋から出ようとした。……でも、扉の奥から何か嫌な予感がしているのは気のせいか?
「どうしました?」
「小屋の外に誰かいるな。嫌な予感がするが」
「お前が嫌な予感ってやばいんじゃねえの!?」
バコン!
「「「あ……」」」
扉が勢いよく蹴破られるとそこにはいい笑顔をしたルミエルが立っていた。
「何をしていたんですか?」
死んだな、こりゃ。
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