プロローグ

第1話

二週間に一度、同じ時間に同じお店からあの男は出て来る。


その事を知ったのは本当に偶然だった。




顔が恐ろしいほどに整っていて、地位もあり頭も相当キレる。



女が放っておかない男。






お店の引き戸がガラリと開いた。



その瞬間を息を殺して待っていた私は、夜の暗闇に影を同化させてそっと目当ての男に近付いて行く。


ジリ、と靴裏が擦れる音が裏道に響き、男と目が合った。



激しい鼓動が身体を打ち付けて、息を呑み込むと喉が鳴る。




「ねえ」


「…」


「私のこと抱いてみない?」




乗るか反るかは男次第。


女を散々抱いて来た男にとって私はその辺にいる底辺の女と同じ。






———ついて来い。






誘ったのは、私から。

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