『罪な私たちの、愛のゆくえ』

ソコニ

第1話 許されない恋の行方



私は今、彼の背中を見つめている。いつもと変わらない背中。でも、今日はその姿が妙に遠く感じる。


「さよなら」


言葉にした瞬間、涙が頬を伝った。


三ヶ月前、私は親友の彼氏・翔太と関係を持ってしまった。親友の美咲が海外出張中、私は翔太の家に遊びに行くようになっていた。最初は何気ない会話から始まり、いつしか心が通じ合うようになっていた。


そして、あの雨の夜。傘を共有した帰り道、私たちは誰にも言えない過ちを犯してしまった。


それからというもの、罪悪感と幸福感が入り混じる日々が続いた。美咲の笑顔を見るたび胸が締め付けられ、でも翔太との時間は甘い蜜のように心地よかった。


けれど、今日私は決意した。この関係を終わりにすると。


「俺たちはこのまま...」


振り向いた翔太の目に迷いが浮かんでいた。でも、私はゆっくりと首を横に振った。


「美咲を裏切り続けることはできない。あなたも、本当はそう思ってるでしょう?」


私の言葉に、翔太は黙ってうつむいた。その表情に、同じ苦しみを見た。


「幸せになってね。美咲と一緒に」


最後にそう告げて、私は歩き出した。振り返らずに。心の中で何度も謝罪を繰り返しながら。


これが、私たちの出した答え。誰も傷つけない選択。


そう、これでよかったんだ。


たとえ心の片隅で、永遠に消えない想いが残るとしても――。


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