第2話 マリボルよりー絵葉書の向こうに広がる冒険
親愛なる孫たちへ
ババは今、スロベニアの第二の都市、マリボルという街にいるわ。
リュブリャナとはまた違う、のんびりとした雰囲気の街。
だけど、ここには世界最古のブドウの木があって、それを守る不思議な伝説が残っているの。
今日はそんなお話を聞かせたいの。
まずは、ドゥラヴァ川沿いを歩いていると、一軒のワインハウスを見つけたの。
そこには、樹齢400年以上の「世界最古のブドウの木」が絡まる石造りの建物があったのよ。
このブドウの木は、戦争や災害を乗り越えて今も毎年実をつけるんですって。
中に入ると、ワインの香りに包まれた素敵な空間が広がっていたわ。
ワインハウスの店主、ミハさんは、白いエプロンをつけた優しいおじいさん。
「観光客かい?」
と聞かれたから、
「ええ。でも、この街の物語を知りたくて来たの」
と言ったら、彼はにっこり笑って、ブドウの木にまつわる古い言い伝えを教えてくれたの。
むかしむかし、この地には葡萄作りを生業とする家族がいたそうよ。
けれど、ある年、大洪水が起こって作物がすべて流されてしまった。
絶望する家族の前に、一人の不思議な旅人が現れたの。
「この木を大切に育てれば、いつか街を救う日が来る」
と言い残し、一粒のブドウの種を渡したんですって。
その種から育ったのが、今も残るこの古木。
そして本当に、その木のワインは人々に希望を与え、この街の誇りとなったそうよ。
ババは、せっかくだからこのワインをひとくちだけ味わってみたわ。
「ツヴェチグナ」というスロベニア特有の赤ワインで、ほんのり甘く、でも深い香りがあってとても不思議な味。
君たちはまだワインは飲めないけれど、大人になったらぜひ試してみてね。
代わりに、ブドウの形をしたチョコレートをお土産に買ったから、日本に帰ったら一緒に食べよう。
それから、ミハさんの紹介で、マリボル城の近くで古い本屋を営むルツィアさんという女性に会ったの。
彼女は、昔からこの街に伝わる伝説を研究しているそうよ。
「この街にはまだ、語られていない物語がたくさんあるの」
と言いながら、一冊の古い本を見せてくれたの。そこには、ブドウの木にまつわる不思議な話や、街に住んでいた錬金術師の記録が書かれていたのよ。
夜になると、ルツィアさんが
「マリボルのもうひとつの魔法を見せてあげる」
と言って、ピラム通りに案内してくれたの。
ここは昔、旅人や商人が集まった通りで、夜になると街灯がぼんやりと灯り、まるで時間が止まったような雰囲気になるのよ。
「昔の商人たちの足音が、今もこの石畳に刻まれているのよ」
と彼女は言ったの。
その言葉を聞いた途端、確かに風の中にかすかな話し声が混じっているような気がして、思わず身震いしちゃった!
こうして、マリボルの一日は過ぎていったわ。
この街には、静かだけれど力強い物語が息づいているの。
世界最古のブドウの木も、この街の歴史を見つめ続けているのかもしれないわね。
次の街の絵葉書も楽しみにしていてね!
愛をこめて、ババより
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