第12話「今後と特訓再び」
「さてさて、この後をどうするかなんだけど、ほんとどうすればいいんだろうね? ユウの特訓もまだ一日だけだし、もうちょっと続けた方がいいのかな?」
俺とスズリが泊まっている部屋で、俺とスズリとイグニアは話し合いをしていた。今後のことについてだ。
「そうだな、ユウにはまだまだ強くなってもらわないといけねぇ。もう少しここで特訓していった方がいいだろう。期間は……そうだな、一週間くらいあればいいかな」
イグニアがそう言った。あ、あの特訓が一週間続くのか……お花畑が見えそうな気がした。
「うんうん、じゃあ目標としては一週間後にここを出発して、ノースキャットに向かうということで! ユウもそれでいいかな?」
「あ、ああ、ていうか、イグニアはついてくるつもりなのか……?」
「おう、俺もお前たちに興味が出たんでな。やることもねぇし、ついて行くのもいいんじゃねぇかと思っているよ」
そう言った後、イグニアがあっはっはと笑った。まぁ剣術の腕は確かなイグニアについてきてもらえると、道中の不安もなくなる気がした。ノースキャットの近くにはゴブリンの巣があるとか言ってたしな。
「そうか、じゃあ申し訳ないけど、俺の特訓と、護衛を頼む」
「おう、任せとけ。ビシッと鍛えてやるよ。ユウが剣術を覚えるのは大事なことだからな」
「うんうん、この先何があるか分からないし、ユウが戦えるようになっておくのも大事だよねー。そしてノースキャットに着いたら、魔法屋かどこかを探して、ボクジュウのことを見てもらおう!」
俺はストレージリングから墨汁を取り出した。先ほど使った墨汁も、いつの間にかまたボトルいっぱいになっている。これは普通の墨汁とは違うと考えておいた方がよさそうだ。
「そうだな、その不思議な液体が何物なのか、知ることは大事だと思うな。この先ユウの大事なアイテムの一つになるかもしれねぇからな」
「あ、ああ、そうだな」
「……よし、話は決まったところで、特訓の続きをやるぞ! また外に出よう」
「え!? も、もうやるのか……分かったよ」
「あはは、イグニアに鍛えてもらってねー。私はまた瞑想をしておこうかな。私もいざというときに魔法が使えた方がいいからね!」
ニコニコ笑顔のスズリとイグニアだった。ま、まぁいいか。ここまで来たら特訓でもなんでも受けておいた方がよさそうだ。
* * *
「右! 左! いいぞユウ! 昨日よりキレがある!」
「はぁっ、はぁっ、こ、こうか」
「そうだ! そこでガードして、次は右! そうだ! 動けるようになってきたな!」
あれから毎日のようにイグニアによる特訓が行われていた。俺もだんだん剣術というものに慣れてきたのか、動けるようになってきたと自分でも思う。しばらく筋肉痛にも襲われていたが、その痛みもなくなってきた。まさか異世界で運動をすることになるとはな。もっと体育の授業を真面目に受けておけば、動きも違ったのかな。
「よし、こんなもんでいいだろう。ユウもだいぶ動けるようになったな!」
「はぁっ、はぁっ、そ、そうか、俺も成長してるってことなのかな」
「ああ、最初の頃とはずいぶん違う。この短期間でそこまで動けるようになるとは思わなかったよ。いや、俺が教えているから当然か!」
そう言ってあっはっはと笑うイグニアだった。イグニアの教えは厳しかったが迷いがなくストレートだった。飲み込みやすかったのもそのおかげかもな。
ふとスズリを見ると、すーはーと深呼吸をしながらなにかをつぶやいていた。よく聞き取れないがあれが魔法のための瞑想なのかな。
「……あ、終わった? 私も終わったよー、これで基本的な魔法は使えるかな!」
「ああ、ていうか基本的な魔法ってなんだ?」
「
スズリがドヤ顔を見せた。なるほど、魔法にも色々あるのだな。こちらの世界はまだまだ知らないことの方が多い。俺も一つ一つが勉強になるというか。
「よし、ここまで来たらノースキャットに向けて出発しても大丈夫だろう。明日にでも出るようにするか?」
「うん、そうしようかー! ユウもそれでいい?」
「ああ、大丈夫だ。三人で行けば何とかなりそうな気がする」
まだ出会って日は浅い俺たちも、結束力みたいなものが生まれていた。
明日ノースキャットに向かって出発することにして、今日は腹ごしらえだ。動いたのでお腹がすいた。俺たちは宿屋の食堂で最後の夜を過ごすことにした。
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