第30話 古谷家大作戦

さてさて、一方その頃、時計屋さんに行けなかったみやび。

一体何があったのでしょうか?


「ねぇ〜お母さん私も言っちゃダメ〜?」

「何度も言っているでしょ?今日は予防接種に行くからダ〜メ!」

「けち〜!」

「あら、注射が怖いのね?わかる。わかるわよ〜その気持ち。」

「え!?お姉ちゃんその歳で注射怖いとか、赤ちゃんかよ!」

「あん?」

「あ、えっと。なんでもありません。」

「っていうか!注射が怖いわけじゃないし!」

「じゃあどうしてそんなに拒むの?」

「それは、」


(光と一緒にお出かけがしたい。なんて、言えないし、、、。って、なんでこんなこと考えてるんだ?私、、、。)

みやびは光に対してどういう気持ちなのかがわかっていなかった。


「それは?」

「それは、私も時計が見たかったから。」

「どうして?」

「最近、時計の調子が悪くって、起きにくいんだよね〜。」

「あなた、いつもスマホのタイマーで起きてるでしょ?」

「、、、。」

「お姉ちゃん、、、。痛恨のミス!」

「うるさ〜い!」

「まぁ。諦めて予防接種に行くことね〜。」

「はぁ〜〜〜〜〜。」

「出たよBICため息」

「何それ。」

「そのままの意味だよ。大きいため息でBIGため息」

「なんじゃそりゃ。はぁ。諦めるしかないか〜。今さら行っても間に合わないし〜。」

「じ〜〜〜〜〜〜〜。」

「どうしたのお母さん?」

「今、隙をついて、抜け出そうとしたでしょ?」

「……してないけど?」

「何今の間?」

「特になんの意味もないよ?」

「そう。」


(よし。今だ!)

みやびは勢いよく立ち上がった。


「三葉!その子を捕まえて!」

「え?えぇ?」

「捕まえてくれたら、いちご買ってあげる!」

「任せてくださいお母様!この三葉が必ずやこの野獣を仕留めて見せましょう!」

「いいから早く捕まえて!」

「おまかせあれ!」

「誰が野獣だ誰が!」

「うわぁぁぁ!」

「三葉!立つのよ三葉!」

「くそ!こうなったら!必殺!わたあめ!」

「くっ!本能が体をわたあめの方に!」

「ふっふっふ!お姉ちゃんはわたあめが最優先だから、抗えるわけが!」

「駄菓子菓子!ここで負ける私じゃないんだよ三葉!さらば!」

「だがしかし!?なんて上手いことを言うようになったのかしらあの子。わたあめが駄菓子だからだがしかしのだがしを駄菓子に変えたのね!?」

「お母さん。そういうのって解説しないほうがいいんだよ?」

「え?うそ!ごめんなさい。って!そんなこと言っている場合じゃないわ!このままだと予防接種に行けなくなっちゃう!」

「ねぇ。よく考えてみて。お姉ちゃんがわたあめより優先したいものってなんだと思う?」

「た、確かに。あの子がわたあめより優先したのはなぜ?なにがあの子をそこまで突き動かすの?」

「まさか、あの男の人、、、?」

「お隣の?」

「うん。」

「それってつまり、、、。」

「「恋!?」」

「ねぇ、なんこんなアニメみたいな話、、、。あ。ごめんこの話はやめよう。」

「で、これからどうやってお姉ちゃんを呼び戻そう?」

「いい考えがあるわ。もしみやびがあの男の子に気があるならきっと戻ってくるはずよ?」

「わかった。話を聞かせてお母さん。」

「えぇ。」__________

「そんな無茶な!成功確率が、低すぎる!」

「でも、これしか方法はない。そうでしょ?」

「もう少し考えればきっと他の方法が思い浮かぶはずよ!」

「ダメよ。そんなに待てない。タイムリミットは15分しかないの。どこまで行ったかわからないから、10分は欲しいの。だからもうこれしかない。」

「っ__。わかった。やりましょう!」

「じゃあ作戦通りに行くわよ!」

「わかった!」


三葉は外に出てすぐに隣の家のインターホンを押した。

ピンポーン。


『は〜い?あら、どちら様?光ならまだ帰ってませんけど、、、?』

「あの、えっと。時間がないので単刀直入に言います。10分ほど光さんの写真を貸してください!」

『あら。どうしてかは知らないけど、あなた。みやびちゃんの妹さんかしら。』

「なんでわかるんですか?」

『似てるからわかるのよ。記憶力はまだまだ現役だからね!」

「それで、いいですか?」

『まぁ。いいわよ。1番最近のやつでいいかしら?』

「はい!お願いします。」

『ちょっと待ってね〜』


〜〜〜〜〜


「はいこれね。なかなかかっこよく撮れたのよ〜。これでみやびちゃんもイチコロかしらね?」

「えっ、、、?」

「なんとなくそんなことだろうとは思ったけど、やっぱり正解だったのね。」

「すごいですね。って。立ち話してる場合じゃなかった!ありがとうございました!」

「頑張ってね〜」

「はい!」

ガチャッ。

「お母さん借りてきたよ!」

「ありがとう。あら、なかなか顔が整ってるわね。」

「もう。いいから早くしないといけないんでしょ!」

「そうっだったわね。じゃあ静かにね。」

「うん。」

プルルルルルルルル。プルルルルルルルル。プルルガチャ。

『戻らないからね!』

「まぁまぁ。落ち着いて。ビデオ通話にするから、画面見ててね。」

『わかった。』


みやびの母 古谷 真美は光の写真をドアップでカメラに写した。とたんみやびは通話を遮断した。


「作戦失敗だねお母さん。」

「いや。成功よ。」

「へ?」


バンッ!と、勢いよくドアが開いた。


「何してんの!?本当に!」

「帰ってくるの早くない!?」

「ね?成功でしょ?」

「もういいから!この写真は返してくるからね!」

「え〜?もうちょっと見とかなくてもいいの?」

「もう、お母さんは黙ってて!」


みやびはダッシュで写真を返しに行った。


「はぁ。はぁ。疲れた。もう行かなくてもいいや。」

「恋のパワーはまだまだね。」

「鯉、、、?」

「あなたにはまだ早いかもしれないわね。」

「まぁいいや。」


無事。みやびが作戦どうりに帰ってきて。めでたしめでたし。



「注射嫌だぁぁぁぁぁ!」

「お姉ちゃんはまだまだお子様だね。」

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