良幸学院歌い手部

しきしま

第1話 Good morning Baltimore

伝統ある高校の校舎が、誇らしく輝いて見える。

中学三年生、卒業間際の三月。

俺、結崎ゆうざき陽希はるきは四月から通う高校を訪れていた。

良幸学院りょうこうがくいん高等学校は、ここ河佐市かわさしに百年以上前に創立された学校である。本日はオープンキャンパスにより開放されているようだ。中学生が数人ずつのグループをなしておのおの散らばっている。

在校生の説明では、聖堂があるという話だった。何か引き寄せられるものがあって、俺はそこへ一人で踏み出した。


建物に入り、廊下を抜け、両開きの扉を開ける。

聖堂の内部は、七色のステンドグラスが散りばめる光に溢れていた。思わず息を呑む。壁の中央で透明な正方形のガラスが集合し、ひとつの大きな十字架を形作っていた。

パイプオルガンの讃美歌が聞こえる。そこで、奥に一人の男子生徒を見つけた。どうやら、何かを歌っている。


俺の足音に彼は振り返る。

青く腰ほどまで長い髪に、浅黒い肌。少し伏せられた形のよい目。


その姿が俺の瞳に映り込んだ瞬間、そしてその歌声を聞いた瞬間、気付いた。

この人を知っている。それどころか、彼は。


息を吸った。


「俺、結崎ゆうざき陽希はるきっていいます」


告白のように、問いかける。


「俺と、歌い手グループを組みませんか?」


それが俺と彼──敬川うやがわ真百合 まゆりとの二度目の出会いだった。

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