【第3話】分離
◯不時着した惑星
宇宙船はそれぞれに独立した部屋が結合した形だ。
中心部分が大きな部屋になっており、全体のバランスを取っている。
脱出した惑星に未練は無かった。
〜なるべく早く離れたい気分だった〜
ワープ航行に入ってから、結束の強い9体はしばらく穏やかな状態が続き、各々自分たちの船室で時間を過ごしていた。船室の外は時が止まったような静けさだった。しかし、とてつもない速度で飛んでいる事は、船室が時々軋む音で理解が出来た。
宇宙の全体像を知る事は出来ない。どのように広がっているのか、その歴史さえ語れる人にあった事がない。理解出来るとすれば、それは創造主以外に無いだろう。
「だいぶ移動したかもね?」
クマル(#kumaru)は船室に遊びに来ていた、クマンタ(#kumanta)に聞いた。
クマンタは眠そうな目で船室の外を眺めていたが、時たま船室に響く異音を感じていた。
「他の星雲に入るタイミングで、このまま航行すれば何か起きそうだな!」
クマンタは相変わらず感動のない言いっぷりだった。彼はいろいろ見てきたんでしょうね。普通レベルでは全く驚く事がないヤツです。この宇宙船の異音が何かの前触れでないかと、うすうす感じているのかもしれない。
……………………(-。-;
ワープ軌道には問題無かった…
ただ、中心でバランスを取っていたクマズン(#kumazun)の船室から、わずかばかりのエアーが漏れていた事が原因だったようだ。
クマペコから親クマズへと分光された時に、最後の部分まで集光した為に、エネルギー的に若干の無理があったのかも知れなかった。
それはクマズンは全く関係のない事だったが、やはり異音が長期間続いてくると、何かしら責任を感じている様だった。
〜自分の船室に戻っている9体の宇宙熊たちにも、普段より長い時間が流れたに違いない〜
……………時の経過…
………大きな光………
………連続する白光…
……断続的な低周波…
〜突然
眼下に青い惑星が広がってきた〜
9体はそれぞれの船室から
その青い惑星を見ていた。
〜あの惑星にいくのか〜
惑星突入の瞬間には慣れてはいるものの、中央部のエアー漏れが影響して、バランスを取るには不安定な状況を作っていた。
〜大気への突入が始まった〜
大きな音とともに船室は
〜大きく分離した〜
◯極寒と灼熱
〜この宇宙船が無ければ
とうに凍えていたかもしれないな〜
ここは氷の世界だ。
コントロールを失った一機は氷山への激突は避けられたものの、極寒の海へ着水したのは、クマンタ(#kumanta)の船室だった。
しかし上空で結合が外れてしまった船は…
それだけではなかった。
〜クマエ(#kumae)の船室もみんなと離れた〜
大きな揺れと共にクマエが着陸したのは、クマンタとは正反対の灼熱の砂漠地帯。大きな破損はしない構造にはなっているものの、やはりダメージは相当なものだった。
通信系が不安定になるには、さほど時間はかからなかった。
極寒の海と…
灼熱の砂漠地帯…
2人はお互いの状況を知る由も無かったが、他の仲間からのメッセージ信号でわかった。
……………………
長い年月が過ぎた………
そう感じるのも無理も無い。
〜戻れないかも…しれないな〜
……………………
極寒の海に着水したクマンタ
仲間との通信が途絶えたきり…
船室の中から出る事が出来ない状況に、
ほとほと嫌気がさしていた。
動力源が途絶える事は無かったが、極寒の海を眺め、時として巨大な生物が船室にぶつかる以外は、退屈な時間との戦いだった。
〜クマエも…そうか…そうだったのか〜
クマンタは再び眠気が訪れたらしく、
寝室へと戻っていった。
………………( ˘ω˘ )
一方クマエは…
熱風が吹き荒れる時間を避けては、定期的に船内から出ていた。灼熱の地面から数メートル上空を移動するには、両腕に装着している推進装置が役立った。
〜まあそんなに熱いわけではないな〜
巨大な岩の影に入って、僅かばかり生えてる多肉植物を採取した。
〜さすがに食べるわけにもいかなかったが…
砂漠地帯を見るたびに…
思い出すことがあった…
…大きな戦争だったのか?…
岩陰に…一瞬!
トカゲが隠れたようだ!
…まさか…
◯孤独な島?
時間は無常にも流れていった。
まあ…今までに比べれば大したことないな
そう思っているのは皆同じだろう。
……………^^
3体が別々の場所に居ることがわかったのは
だいぶ経ってのことだった…
〜クマル〜そうおまえだよ〜
クマルもだったのか?
彼は無人島に…流れ着いていた。
極寒の海と、灼熱の砂漠に飛ばされた2人。
クマズ他3体と若手3人衆の船室は、彼らからは数百キロは離れてはいるものの、何とか駆動エンジンが壊れずに無事に着陸が出来たようだ。
〜それとは別に分離したクマル〜
普通に通信が取れていたため、みんな当然どこか近くに居るものだと思っていたらしい。
まさか…彼が無人島に居たとは…
忘れてしまった訳ではないのだが、クマル自身がなぜか快適な生活を送っていたらしく、SOSを出す事はまったく無かった。それが単純な理由だった。
〜なんて気分爽快なんだろう〜
そして周りの海は音も無く穏やかだ。
空は限りなく青い。
宇宙船は巨大なヤシの木に隠れるように斜めに立っていた。
〜今日はこれを食べてみるか?〜
おもむろに、すずなりの赤い果物を🍎ほおばった。満足そうに2個目を取ろうとした瞬間にクマンズ(#kumans)から連絡が入った。
「おまえ一体…どこにいるんだ?」
……………^^; ……
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