最愛の詩音へ
一宮 沙耶
Subject: 澪、ごめんね
澪へ
直接会って話す勇気がないからメールでごめんなさい。
言いづらいけど、もう会うのはやめたいの。
澪には感謝しかない。
元カレが浮気してボロボロだった私に生きる気力を取り戻してくれた。
もうあれから1年も経ったのね。
スカイツリーが見える東京ミズマチのカフェ。
そこで、1人で泣いていた私に声をかけてくれた。
なにも言わずに日が暮れても横にいてくれた。
隅田川の川沿いを笑顔で一緒に散歩したわね。
澪のおかげで、笑顔でいられる時間が増えていったの。
家から出れなくなった私にいっぱい色をくれたわね。
皇居を囲む満開の桜。
小川沿いの遊歩道で新緑から漏れる木漏れ日。
雨が上がって宝石のようにきらめく水玉を乗せたアジサイ。
澪との日々は輝いていた。
初めて口を重ねたときは驚いたのよ。
だって、女性とそんな関係になるなんて考えたことがなかったから。
でも、大切なのはジェンダーじゃなくて、気持ちなんだって気づかせてくれた。
私の気持ちを一番考えてくれたのは澪だった。
澪の部屋で一緒に暮らした時間は本当に楽しかったの。
ずっとキスをしながら、朝までベッドで一緒にいたよね。
誤解してもらいたくないんだけど、それが嫌だから、別れ話しをするわけじゃない。
あんなに幸せな気持ちになれるなんて考えたこともなかったから。
キラキラと明るい光に満ちた日々だった。
でも、この前、元カレからよりを戻そうと連絡があったの。
そして彼から抱きしめられたとき、私の気持ちは抑えられなくなった。
やっぱり彼といたい。
そして、彼が自分だけをみろと言っているのよ。
澪といると、一緒にいた頃の気持ちが蘇り、澪に頼ってしまうもの。
そうすると、彼が嫌がるの。
本当にごめんなさい。
澪に素敵な人が現れるのを祈ってるから。
さようなら。
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